サヨウナラ由比町3「味覚と祭」

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 由比の味覚といえば、温州ミカン、倉沢びわ、そして桜エビが挙げられます。ミカンについては天明6年(1786)、紀州出身の厳城和尚が、気候風土のよく似た由比の地へ紀州ミカンの苗木を植えたのが始まりです。また、びわは昔から「茂木びわ」という、小粒のびわが栽培されていましたが、明治の半ばになって、九州で栽培されていた甘く大粒の「田中びわ」を西倉沢・柏屋川島幸平氏が貰い受け、苗木を栽培したのが現在の由比のびわになったようです。ミカンもびわも、由比の温暖な土地が育む味覚の実りといえましょう。収穫の時期を迎えた町の段々畑は、暖かい潮風を浴びたミカンやびわの実で、色とりどりの賑わいをみせます。
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 そして“桜エビといえば由比”といわれるほど、日本一の桜エビ漁の町として、由比は全国に知られています。桜エビを使った料理の店が、町内に数多くあり、なかでも由比漁港内にある『浜のかき揚げや』は、漁船から直に卸される新鮮さが、訪れる観光客に人気を呼んでいます。
 由比の桜エビ漁が盛んになったきっかけは、明治27年(1894)冬、由比町今宿・渡辺中兵衛共同の鯵夜曳船(夜間に鯵を捕るために網を曳く船)が、富士川の河尻沖で網を下ろす際、いつも網に付けている浮樽をうっかり忘れ、そのまま網を下ろしたところから始まります。網が深く沈み過ぎ、やがて網を引き揚げると、思いがけないほど多く(一石・180L)の桜エビが捕れ、やがて鯵船曳網から桜エビ揚操網漁に変わって、日本一の桜エビ漁の町になったようです。以前は、捕れた桜エビを浜に干したため、由比の海岸は赤い桜エビの絨毯のようで、鮮やかな風情がありました。今は、冷凍技術や輸送の進歩で、新鮮な生桜エビが全国の家庭でも味わえます。
 この桜エビにちなんで、毎年5月3日に由比漁港では、「桜エビ祭」が開かれ、多くの観光客で賑わいます。このほか、由比名物の甘夏ミカン“デコポン”にちなんだ3月の「デコポン祭」、大道芸や太鼓など様々なイベントを繰り広げる、10月の「由比街道祭」など、オリジナリティ豊かな催し事はいずれも大好評です。
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 明治22年(1889)に町制施行した由比町も、町政120年の歴史に幕が降りようとしています。2008年11月1日には静岡市清水区に編入。由比の地名は片隅になってしまいますが、豊かな恵みの町は健在です。標高707mの浜石ヶ岳の頂上に立てば、快晴の日には北に南アルプス連峰、東に富士山、そして駿河湾の大海原の南には伊豆半島、西に三保半島と360度のパノラマが広がり、風光明媚な由比の地を眺望することができるのです。
おわり
由比町消滅まで残りあと1日!
投稿者:にわあつし
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