観光地トイレの向上について3

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●他地区のトイレ状況
都市型観光地で外国人観光客の多い典型的な例を紹介しよう。「浅草」である。ご承知のように仲見世から浅草寺にいたるまでのトイレ事情は、外国人ならずとも観光客泣かせと言わざるを得ない。案内板やパンフレットにトイレの位置は表示されている。でも、あればいいというものではない。設備といえば到底外国人観光客の満足のいくものではない。
旅ジャーナリスト会議のメンバーで通訳ガイドをしているSさんの話では、仲見世を観光中トイレに入っても、あわてて飛び出してくる。そして近くのホテルへ駆け込み用を足すのだそうである。日本トイレ協会でも観光地トイレの調査を行った際、筆者も実際に浅草を調査してみたが、これでは当然だと思った。観光立国宣言、外国人観光客1000万人誘致どころではない。ほかに「上野」なども同じような状況と言える。
●国立公園での有料チップ制の現状
我が国の国立公園は29か所208万6790ha、国土面積の5.52%ある。最近は世界自然遺産登録をめざすところが増加している。世界自然遺産というのは観光振興の観点はない。むしろ尚一層の保護の徹底が必要とされる。しかし、この趣旨が理解されずに我が国では観光振興の道具にされているという。そして世界遺産ブームとなり多くの観光客が大量かつ、季節によっては大変な混雑でピーク時対策に追われている。これは本来避けるべき事態なのである。このような意見は当然のことながら環境省や国土交通省にもある。
一方、観光立国宣言により観光振興、観光客誘致を推進する国土交通省の観光関係部局や経済産業省などとは意見を異にする。また、国定公園56カ所、都道府県立自然公園309カ所ともなると、地方自治体の管轄となる。今年は自然公園法制定50周年、国立公園法制定から76年目を迎えており、富士山をはじめとする山岳、国立公園でのトイレ対策は喫緊の課題と言えよう。
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上高地の有料トイレ
●上高地、尾瀬にみる有料チップ制の成功例
山岳トイレ補助金(山岳環境等浄化、安全対策緊急事業費補助)により、環境保全型トイレを整備した山小屋においては、トイレのチップ制導入や有料化を実施している。公衆トイレについては、チップ制導入箇所は少なく、成功例は上高地と尾瀬であり、それ以外は概ね赤字となっている。上高地はバスの駐車場側(マイカーは乗り入れ禁止)にある公衆トイレで、スタッフが協力金を徴収している。協力依頼金は一人一回100円。この一カ所の協力金で公園内の各所のトイレ管理、メンテナンスに充当しているのである。
しかし、マイカー乗り入れ禁止により70万人の観光客が35万人と半減、収入も半減した。尾瀬でも60万人から33万人に半減しているという。さらにチップは硬貨であるため、集金する銀行員が背負って下山するなどの問題も抱えている。多くの観光客は「トイレはタダ」という観念を持ちつつも、上高地や尾瀬のようなところでは環境保護意識の高まりからか、チップ制は定着しているものと思われる。いずれにしろ受益者負担と行政サービスの配分について多くの課題を抱えているのである。
パート4につづく
投稿者:菊地正浩
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