東西2か所の成人式発祥の地① by 菊地 正浩

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毎年1月には全国で成人式が開催される。戦後、虚脱状態にあった若者達を励まそうという試みが、全国各地で行なわれた。そのルーツを追ってみると、意外なことに東西2か所の行政で、我が町が成人式発祥の地と言っている。当初は1月15日に国民の祝日として行なわれたが、2000年からは祝日連休化により、1月第2月曜日に変更された。

 埼玉県蕨市(わらびし)
中山道の蕨宿は、昨年開設四百年記念を迎え、「宿場祭り」が盛大に行なわれた。

蕨という地名は、文明9年(1477)武州足立郡芝丘郷蕨村として登場する。古くからの集落であるが遺跡はない。因みに蕨、わらび、蕨野などの地名は全国に70か所以上ある。しかし、行政としては唯一蕨市だけである。

昭和21年11月22日から3日間、蕨町青年団が発案して「青年祭」が行なわれた。文化展覧会、芸能大会、野球、卓球、バザーなど多彩な催しが実施され、町をあげての一大イベントであった。その時、大正15年11月22日~昭和2年11月21日までに生まれた男女に呼びかけ、約100名の若者が出席して「成年式」が行なわれた。

こうして全国に先駆けて行なわれた「成年式」に、県や国から関心が寄せられた。昭和23年「成人の日」が国民の祝日として制定され、全国各地で成人式が行なわれるようになった。蕨市だけは発祥の地として、現在でも「成年式」の名を守り続けている。

昭和54年、「成人の日」制定30周年記念として、蕨城址公園に「成年式発祥の地記念像」が建立された。

 

成年式発祥の地記念像
宿場祭の行列

 

 宮崎県東臼杵郡諸(もろ)塚(づか)村(そん)
県北部、耳川の上流部に位置。九州山脈の真只中で、海岸線を隔てること約48km。

山村原野は全面積の94%で、山の斜面を利用する田畑だけが唯一の耕地。我が国有数の椎茸の産地として知られる。神代の遺跡、諸塚、飯塚、花塚、桐ノ塚、高塚などの円墳が十数基あり、諸塚の語源と思われる。筆者が訪れた時に丁度、「諸塚駄賃つけ唄全国大会」が行なわれていた。

平成元年10月6日、歴史民俗資料館入口に建立された「成人式発祥の地碑文」によると、昭和21年、男子20才、女子18才の男女を対象に、約10日間の宿泊訓練(成人講座)を行い、最終日を成人祭と称して証書を授与したのが成人式の始まりであるとされている。第1回は昭和22年4月3日である。2年後の昭和24年には国でも成人の日が制定された。当時の村長は村おこしを力説し、成人式を村の行事として定着させたと書かれている。

成人式発祥の地碑文
諸塚駄賃つけ唄全国大会

 

 

東・西2か所の発祥地、本当はどちらなのか?双方の発祥地を訪ねて記念碑を前に考えてみた。どちらでも良いではないか。戦後の混乱期に志を同じくした人達が、町村の青年に頑張って貰いたいとの思いが伝わってくる。姉妹都市にでもなって仲良くすれば良いと思う。

 

( 2013年1月27日 寄稿 )