現役路線バスの運転手は語る①  by 増井 隆之

< 夜行バスとひと口に言っても… >

 7人が亡くなった関越道でのバス事故のあと、「夜行バス」の報道がしきりになされている。しかしその運行形態には「ツアー」と「路線」の二種類あり、ときには混同して報道されている向きもある。

 その区分ははっきりしていて、「ツアーバス」は会社にとって都合のいい時だけ運行するが、「路線バス」は利用人数がゼロであろうと毎日運行していて、その分の経費負担や情報収集もしている。路線バスは自社営業路線なり共同運行路線なり、お互いに同じルートを走る者同手が情報交換をするが、ツアーバスは単体での運行なので、運転手が得られる情報量が断然少なくなる。路線バスの運転手は通過する場所やルートに精通しているので、万が一のときも対応でき、リスクも少ない。しかしツアーバスの場合は、万が一のトラブルに対応しにくいので運転手のリスクも多くなる。

 例えば、路線バス会社だと、毎日担当している会社内で「今日はこんな事があった」とか、「このルートの〇〇付近で△△のような災害や通行止めになった時、□□を抜けて行った方が遠回りだけれど安全」という話題が仲間内であり、この情報交換がまさかの時の対応の助けになる。

 一方、ツアーバス会社だといくら決まったルートを走るにしても、バス会社同士で付き合いや情報交換がなければ、運行している時に何らかのトラブルがあっても(災害等を含む)すぐに対応出来ず、そのため無駄な時間を使ってしまう可能性が大きい。確かに、大型二種免許があってバスを運転できても、日頃からトラブル対処法を心得ていない運転手が担当するバスに乗った場合、今回のように道や運転に不慣れの状態であり、さらに夜は昼間より運転しにくくなるので危険性も大きい。

 以上のようなことを考えず、ただ単に「安い」だけを理由に夜行バスを選ぶと、事故やトラブルに遇いやすくなると言っても過言ではない。安くなっている分、それだけ運用レベルが低いことを利用者は知らないといけない。食と同じように、安全を求めるならある程度のお金を払い、きちんとした対応をしてくれるバス会社のバスに乗るべきだろう。

 私は路線バスのバス運転手であり、このあたりの事情がよく分かっているつもりである。だから私はいくら安く旅行しようと考えても、バスの運転で一番難しいとされている、夜間高速バスだけはツアーバスの利用は避ける。 安さを求めた結果がこんな初歩的な事故や、トラブルが頻繁に起こるなら、今や日本は、発展途上のレベルだと思うほかない。

 

( 2012年6月3日 寄稿 )

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