旅行者から見て、時間がかかる代替えバスは不便だ(長野電鉄旧屋代線)  by 多賀 泰彦  

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 長野電鉄屋代線が廃止された4月1日に代替えバス(長電バス)に乗ってみた。

< 須坂駅前を出発する長電代替バス >

  須坂駅前を10時15分に出発したバスは、乗客がわずか5、6人で、前日まで2両編成のワンマン運転で走っていた電車の屋代線とはだいぶ違う雰囲気である。バスは旧屋代線に沿う形で運転されていた。どこか気の抜けたような代替えバスは、途中で何度も旧電鉄駅前に立ち寄り、既存の道路を利用しながら走り続けた。旧屋代線の線路に沿って伴走したり、今は無関係となった踏切を越える時、乗客は食いいるようにレールを見ているのが印象的だった。

< 踏切の竹竿も捨てられていた (旧松代駅近く、代替バスの中から撮影) >

 

 長野電鉄は、この廃線に対し路線代替えバスを準備したため、大きな混乱は無かった。2002年に木島線(信州中野駅〜木島駅)の廃線を経験しているだけに、その時の経験を生かし、事前に住民に対しても広報活動を行なったようだ。しかし観光客、旅行客から見れば、良いことはあまりない。

< 今日から主役は代替バス(旧松代駅前)   また、屋代駅付近では渋滞も心配される >

 まず、一日の運行回数が15往復と電車の時と大きく変わらないが、所要時間が電車よりもかかることである。電車では屋代駅から松代駅まで所要時間13分であるが、バスでは、28分かかる。須坂駅から松代駅までは電車で23分であったものがバスでは53分もかかる。須坂駅〜屋代駅間で見てみると電車なら36分だったものが、代替バスだと1時間18分かかる。このことは電車駅が13駅であったものが代替えバスになり、50以上の停留所が出来たことにもよるのだろう。住民にとってはある程度納得できるかもしれないが、旅行者から見れば、どこを走っているのかもわかりにくくなり、不便になったとしか言えない。同じ時に廃線になった青森県の十和田湖観光電鉄では代替えバスの乗車率が鉄道に比べ20パーセント減少という報道があった。これは観光客ばかりでなく住民も代替えバスに乗らなくなったということだろう。

 

< 代替バスから旧屋代線の線路を見る(旧松代駅〜旧屋代駅) >

 代替えバスの話が続いているが、もう一つ気になることがある。東日本大震災で大きな被害を受け運休中のJR気仙沼線が鉄道でなく、被災線路をバス専用道にし、BRT(バス高速輸送)として路線バス運行し復活させる工事が始まったというニュースである。この問題も本欄で扱わなければならないが、いずれにしても鉄道の安易なバス路線化は旅行客から見ても望ましくないと言える。

( 2012年6月11日 寄稿 )