高速ツアーバス事故と規制緩和を考える  by 多賀泰彦

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<2012年4月29日未明 関越自動車道 高速バスツアー事故>

 乗客7名死亡という、居眠り運転による痛ましい「高速バスツアー」事故が起きた。

 

高速ツアーバス 新聞各社報道

 2000年の国土交通省による規制緩和(道路運送法改正)が遠因と各新聞も報じている。規制緩和はイコール 競争社会への突入ということにつながった。事故を起こした高速バスツアーは、金沢駅~新宿駅・東京駅・TDL(東京ディズニーランド)間を運行するもので、同区間の高速ツアーバスの中でも片道3500円と最安値に近いものである。これは同じ様な区間を走る路線バスの高速バスで金沢駅東口~新宿駅の片道7840円に比べても安い。さらにJRの新幹線利用(東京駅~湯沢駅経由在来線特急利用~金沢駅)だと、1万3010 円かかる。

 各地から首都圏に集中する夜行の高速バスツアーの多くが、TDL往復となっている。事故を起こしたツアーバスも東京駅・TDL行きとなっていたが、乗客45名のうち、新宿駅で23名、東京駅で15名、TDLで7名が降りる予定になっていたという。必ずしもTDLが目的地ではなくて、路線バスの高速バス代わりに使われていることが分かる。

 予約についても、インターネットによるものが多く、29名がネットの「楽天トラベル」を通して申し込み、1名が他サイトを通して予約している。残りの15名は企画旅行会社のハーヴェストホールディングに直接ネットなどを通じて申し込んでいるという。まさにネット時代の現象といえよう。

 楽天トラベルは日本最大級と自負する40社ほどの企画旅行会社の高速ツアーバスの検索と予約を扱っており、格安の高速ツアーバスを利用する者にとっては便利なサイトである。しかし今回の事故を見ても、企画旅行会社、バス運行会社、予約代理店の関係、特に管理と責任の関係は複雑である。今回のバス運行会社「陸援隊」(針生エキスプレス)のように臨時運行の会社の立場は圧倒的に弱い。しかも高速バスツアーの利用者は2005年に23万人だったものが、2010年には600万人を超えたという。この現実を踏まえながら、早急な対応が望まれる。

 ともあれ、2000年以降のいわゆる規制緩和は、交通とりわけ地方の路線バスの世界にも多大な影響を与えている。競争原理の導入により、路線バスの免許制が認可制になり、路線の廃止も届出制になり、かなり自由に路線の廃止をできるようになった。不採算ということで各地の公共交通である大手の路線バスが撤退し、代替えバスが全国の市町村営のバスとして苦闘しながら運行されていることも忘れたくない。交通関係の規制緩和が及ぼした悪影響の見直しを、部分的に直ちにする必要があるのではないか。

 

( 2012年5月3日 寄稿 )

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