保存すべき長野電鉄旧屋代線 松代駅舎とレール  by 多賀 泰彦

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がらんとしたホームでは時計のみ動いていた

 

 4月1日長野電鉄の旧屋代線松代駅に出かけてみた。晴天下にある駅舎は静まり返り、前日の「廃線パーティ」とは打って変わって、寂しい情景が待っていた。あたり前だが、駅員の姿はなく、何かあきらめきれないのか鉄道ファンのグループやら、地元のであろうか親子が、ひっそりとしたホームやレールをぶらりと散策していた。警報機も鳴らず、赤信号だけがついた線路は、廃線の現実を突きつけるには十分だった。旧駅前広場には、時たま長電屋代線代替え路線バスである長電バスが停まり、数人の客が乗り降りしていく。

キップ売り場は閉められた
電車の来ない駅を記念撮影

 

 観光松代には、やはりこの駅が必要だと思う。遠くから電車利用で訪れた観光客は、松代駅から「まち歩き観光ルート」や「松代史跡遊歩道」を歩いていくのが、一番わかりやすかった。やがてこのスタイルが崩れていくかと思うと誠に残念である。せめて風情のある木造の駅舎とレールを鉄道記念館として残したいと強く思う。

もう電車の止まらない旧松代駅

 

 松代地区住民自治協議会だより(52号)によれば、屋代線跡地利用の要望書を長野市に出すという。その主な点は、松代駅を改修して活用する。駅舎のほか、屋代線に関わる機材、設備を長野電鉄から屋代線の資料館にする。駅跡地を「まちの駅」として整備し、観光案内所、地元特産品の直売所、飲食の出来る施設などを整備する。松代駅地区内の五つの駅舎は代替えバスの待合室として利用するなどをあげている。その他、屋代線のレールを残しながら、LRT(ライトレール・軽量軌道交通)の導入なども論議しているようだ。いずれにしても、長野電鉄は、屋代線の跡地を沿線3市(長野市・須坂市・千曲市)に無償譲渡することを表明しているので、観光客、旅行者にとってもベストの方向に進むことを期待したい。我々も旅行ジャーナリズムの立場から、様々な声を市だけでなく長野県に対しても上げていきたいと思う。

 

「松代地区住民自治協議会だより」から

 

( 2012年5月10日 寄稿 )