『この夏はやはり東北を旅してみたい!』 ・・・ガイドブックに見るその状況  by 多賀 泰彦

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< 旅行情報誌・ガイドブックに見る、2012年観光東北の状況 >

 ●「るるぶ情報版」の記事が光っている

昨年の3・11東日本大震災以降も、震災以前の情報を載せたまま売られていた、東北関係の旅行情報誌と旅行ガイドブック。春以降に新版や今年度版が発行され始めたので読んでみた。

「東北」関係の旅行情報誌、ガイドブックも揃いだした

被災地を含む「東北」関係のものを見ても、三陸海岸の観光地のガイド記事が極めて少なく、さびしい限りである。掲載されているのは、比較的被害の少なかった宮古、松島ぐらいで、釜石、大船渡、陸前高田、気仙沼、南三陸、女川、石巻付近については、後述の特集以外、ほとんど掲載されていない空白の地域となっている。

今年度版を編集するにあたり、取材ライター、カメラマン、編集プロダクション、出版社の担当編集者の苦労が忍ばれるところだ。旅行情報誌やガイドブックは1年間か1年半ごとにほぼ定期的に新しい内容で発行されるのが一般的なだけに、次年度版発行までは、現状のままの内容で書店に並び続けることになる。

各誌とも、それでも極力、三陸海岸の観光ポイントを扱おうとしているのが読み取れる。

JTBパブリッシング発行の「るるぶ情報版・東北」(2012年4月1日発行)や「るるぶ情報版・仙台・松島・宮城」(4月1日発行)では小スペースながら特集を組んでいる。中でも、「るるぶ情報版・仙台・松島・宮城」では、「今こそ観光で復興支援、石巻・気仙沼エリアへ行こう!」という記事が光っていた。とりわけ、地元石巻でWEB製作(http://ishinomaki-photo.blogspot.jp/)などに携わる編集者(真羊舎)の日下羊一・真理夫妻の執筆した「石巻からのメッセージ」の記事に地元からの気持ちが伝わってきた。少し長くなるが引用しておきたい。

地元からのメッセージや現況を伝える旅行情報誌、ガイドブック

「石巻の市街地は、海・川・運河に囲まれた低地が多いため、津波被害が広範に及び、約4千人が犠牲となりました。震災当日、私たちは丘の上に避難し、雪の中、濁流に壊されていく町をみました。海岸沿いの工場や学校は燃えていました。

大きな悲しみを乗りこえ、石巻は復興への道を歩み始めています。蒲鉾店も、海産物店も、寿司店も、壊れた建物を修理し、あるいは他の場所に移転して、次々に営業を再開しています。

津波の後も海は豊かです。カキやワカメ、海苔の養殖が再開され、ホヤやホタテ養殖の準備も始まりました。

町はまだ、あちこち壊れたままですが、ありのままの石巻を、見に来ていただければと思います。」

ほかに気仙沼市観光課からのメッセージも載っており、「気仙沼の現状も見に来てください」と呼びかけられている。ガイド記事として、石巻の「藤や食堂」や「すし寶来」などのお店紹介、同じく仮設店舗で営業を再開した、気仙沼名物のふかひれ寿司で知られた「あさひ鮨」。ニンニク味噌味で知られる「ホルモン道場」などが紹介されている。

昭文社発行の「まっぷるマガジン・東北」(4月15日発行)や「まっぷるマガジン・岩手・盛岡・遠野・平泉」(3月15日発行)でも小特集で「がんばっています!東北」を組んでいる。特に「岩手・盛岡・遠野・平泉」では、岩手復興応援企画・三陸に行こうを8ページにわたり特集。ここでも三陸各地からのメッセージを載せている。ガイド記事としては、各観光地の見どころ情報のほか、大船渡の「おさかなセンター三陸」や、陸前高田の仮設プレハブで再開した中華料理の店「麺飯厨房仙華園」、釜石の「まんぷく食堂」などが紹介されている。

ガイドブックでは、実業之日本社発行のブルーガイドてくてく歩き「東北」(1月15日発行)が、空撮写真家の山本直洋氏の写真と文「空から見つめた石巻のいま」を紹介。人々の折れない心が復興への光と訴えている。ともあれ、メディアが被災された観光地の現況を読者・旅行者に伝えることは大切な役割だ。今後の編集努力に期待したい。

近畿日本ツーリスト(knt)や日本旅行、JTBなどの旅行会社やJR東日本などの鉄道会社、高速バス会社なども、こぞって東北キャンペーンに力を入れていることも忘れたくない。

 

しかしながら、あまりにも被災規模が大きく、まだ多くの施設や民宿、旅館、ホテル、飲食店、商店の再建のめども立っていないところも多い。旅行者の訪れを期待するだけでは復旧・復興はかなわない。安心、安全な観光地づくりのためにも、国土交通省、観光庁には、現地の声、力を活かした町づくりに必要な道路・鉄道などのインフラ整備と、スピード感のある復興援助を継続することも期待したい。

 

( 2012年7月15日 寄稿 )