後退が進むヨーロッパ・アルプスの氷河 by 森田 芳夫
- 2012.08.24
- 海外ほっつき歩き(KG)
ヨ―ロッパ・アルプスでは地球温暖化の影響で、氷河の後退が徐々に進んでいる。数年たって再訪すると、白く輝くその眺めもその末端では川床を思わせる岸壁の姿にとって変わっていくのが素人眼にも分かる。
2010年9月、オーストリアの最高峰、グロース・グロックナー山(3797m)を望む展望地、フランツ・ヨーゼフ高地で以下のような標識を発見した。
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パステルツェ氷河
パステルツェ氷河は東アルプスで最も長大な氷河であり、アルプス全域では9番目に大きい。
平均速度は1年15cm。全長8.4kmがこの谷を流れ切るには560年を要し、流域の標高差は1,600mである。1995年の調査では氷河が最も厚い地点はアイスフォールであり、その厚みは275mある。
1850年前後は最も冷涼な時期であり、そのころ氷河は最大となった。それ以降氷河の末端は2.6km後退している。氷河面積も26.5平方キロから18.5平方キロと減じ、全氷塊の体積も3.5立方キロから1.77立方キロへと半減した。
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鉄柵から下を見ると壮大な氷河の展望が開ける。
パステルツェ氷河は手前の丘に阻まれて見えない。
日本でも今年は「特筆すべき猛暑の年」としきりに報道されているが、温暖化の度合いは日本に留まらず、地球全体に広がっている。特に北極圏のグリーンランドで大量に氷が融け出していると言うニュースは衝撃的である。
スイス、オーストリアなど「自然」を観光資源とする国々は、ハイキングルートやスキーゲレンデを整備し、春には高原に花の種を播いて広大なお花畑を作り、夏前には草刈りをしてのどかな牧場景観を作り出し、さらに季節ごとに森林や野生動物の保全に努めるなど人手をかけてその魅力を高める努力を重ねてきている。
しかし山岳景観の最大のアクセントとなる氷河については、もう地元の人の手だけではその後退をとめられないところに来てしまったようだ。
( 2012年8月25日寄稿 )
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