☆『日本の手すき和紙技術』が無形文化遺産に登録決定 ☆  旅ジャーナリスト会議会員、菊地正浩氏による「和紙の里」へ誘う決定版!!

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発行所 ㈱草思社 ☎03-4580-7676 定価本体2500円+税

 
 
 大陸から製紙が到来して約1400年、果たして手漉き和紙は生き残れるのだろうか。そんな思いを抱きながら日本列島の紙里を旅することにした。

かつて欧米人は「木と竹と紙の文化」と日本を紹介している。歌舞伎や落語、相撲、書道、茶道などでも和紙なくしては始まらない。便箋や着物(紙子)が常用され、今も着ている地方がある。風物詩である鯉のぼり、花火、凧揚げなど庶民的なものから、奈良のお水取りで着る裃、正月に宮中で行われる歌会始の紙、先日の衆議院解散で使われた、天皇陛下の詔書など数え上げたらきりがない。

加えて近年、我が国だけでなく、イギリスの大英博物館、アメリカのメトロポリタン美術館などからも和紙の注文がある。美術品や古文書類の修復に和紙が欠かせないからである。

これらは我が国の豊かな自然環境の中で育まれた手漉き和紙の技術により、特有の美しい紙を生み出してきた。

しかし今、紙里では様々な問題が浮上している。自然環境の変化、後継者問題、機械化の拡大などである。

伝統ある手漉き和紙が、なぜ今消滅しつつあるのか。伝統文化を守り、懐かしい風景を残す手漉き和紙の里は、もはや消えていくのか。後継者育成を図っている自治体はどうするか。

魅力を知って各地で修業し、「一代漉き」となった若者、これから伝習を目指す若者はどうなるのか。

手漉き和紙を愛し、先行きを懸念する旅ジャーナリストとして実態を見聞するため、一念発起して全国の取材旅行に臨んだ。

東日本大震災をはさんで日本列島の紙里を隈なく探訪した記録を著書にした。

旅ジャーナリスト会議会員 菊地 正浩

 

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続きまして、旅ジャーナリスト会議から菊池正浩会員へ敬意を込めて

 

 

世界各国での翻訳出版が待たれる菊地正浩著『和紙の里 探訪記―全国三百カ所を歩く』

旅ジャーナリスト会員  森田 芳夫

今まで誰も書かなかった、いや書くことができなかった本書は、2012年8月に誕生した。足掛け三年間の現地踏破と、一年半の執筆期間を経て上梓された本書は、その年の秋、和紙業界の垣根を越えて全国的に注目されるに至った。

新聞雑誌による紹介・書評記事の掲載はもとより、目ざといテレビ局はさっそく著者に出演を要請、まず8月21日のBS11への放映となった。

BS11に出演。宮崎美子さんは著者(左)の見識の深さに大感激

旅ジャーナリスト会議の長年の会員である著者は、かつて北海道から九州まで支店を持つ大銀行の支店長を歴任した根っからの経済人である。そして現在は蕨ロータリークラブ会長職として地域への奉仕活動のほか、日本トイレ研究所、日本地図学会、出身大学OB会などそれぞれ分野で重要な役割を果たしている。

本書が単なる土地案内に留まらないのは当然である。これだけの知見があればこそ筆さばきの幅は広くて深い。和紙の技法はもとより、ミズーリ号上での日本降伏文書に和紙が使われたこと、和紙職人を描いて芥川賞を受けた作家がいたこと、ヨーロッパでの絵画修復に和紙が必須であるなど、思わぬエピソードがちりばめられている面白い本でもある。

1000cc位の小さな車でなければ、鉄道もバスもない和紙の里へたどり着けないという。収録された150点の写真と図版がその足跡を見事に証明している。もはやその体力はないとつぶやく著者であるが、随所に流れる伝統文化への愛着と、失われていく和紙の技への哀惜の念は読む人の心を強く打つ。

世界遺産への登録を機に本書を頼りに「和紙の里」への旅が始まり、全国どこか燃え尽きそうな和紙の技が大きな炎となって再興するきっかけとなることを願ってやまない。それが「旅ジャーナリスト」としての著者、菊地さんの願いでもあろう。

そして国際的に注目を浴びる世界文化遺産「和紙Washi」のバイブルとして、英語を皮切りに本書が世界各語版で出版されることを願うのは私だけではあるまい。

( 2014年11月27日寄稿 )