滋賀県・長浜市を訪ねて(その2)  by 有田 慎二

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―前回の記事に続きます―

 

☆ 丸い食パンのサンドイッチでブランチ

 

「慶雲館」の次に向かったのは、「まるい食パン専門店 つるやパン」。普通は四角い食パンを、あえて丸くしたその発想が面白い、と思って聞いたら、「うちでは昔から丸い食パンをつくっていたので、子供の頃は食パンは丸いものだと思ってました」と笑うのは、店長の西村洋平さん。「まるい食パン専門店」は、木之本町にある「つるやパン本店」の2号店という位置付けで、まるい食パンをはじめた「つるやパン」の創業者は西村さんの祖父に当たるが、なぜ、丸い食パンなのか、については詳しいことはわからないという。

まあ、それはいいとして、「まるい食パン専門店」では、もちろん丸い食パンを売っているわけだが、店内はお洒落で奥にイートインスペースもあり、パン屋さんというよりはサンドイッチ店のよう。朝7時からはじまる朝ベイクと、11時からの昼サンドが大人気で、丸い食パンでさまざまな具材を挟んだ丸いサンドイッチは見た目も可愛く、それがキレイに陳列されたお店はいかにも女性受けしそうだ。

「まるい食パン専門店・つるやパン」の外観
「まるい食パン専門店・つるやパン」の外観

 

この日頼んだのは、「焼サバ」(250円)と「みたらし」(150円)。サバとパンが意外に合っておいしい。みたらしは、みたらし団子のタレではなく、ちょっと甘じょっぱくて、やっぱりパンと合う。まるいパンがフワフワで美味しいから、何にでも合うのだろう。

ところで、皆さんは「サラダパン」ってご存知だろうか? これは滋賀県のB級グルメとして全国的に有名になったパンであるが、具材の沢庵が賛否両論で物議を醸している。じつはこの「サラダパン」も「つるやパン」がはじめたものだそうだが、ここ「まるい食パン専門店」のサラダパンは、沢庵を使っていない。同じ「つるやパン」の系列店なのに、なぜ? と聞くと、「それは本店へ行って食べてもらえればいいかな、と思って、うちではあえて沢庵を使う前の、昔のサラダパンにしています」とのこと。本店に対する反骨心でしょうな。

「つるやパン」は店の他にパン工場も持っていて、スーパーなどにもパンを卸している。西村さんはその経営一族の1人だが、同じことをやっても面白くない、ということでサンドイッチをはじめたという。そして、さまざまな具材を試すなどして研鑽の日々を送っているわけだが、その裏には、ここにしかない味をつくって、この街に人を呼びたい、という思いがある。つまり、まるい食パンで地元の活性化に貢献したい、と、頑張っているのが西村さんなのだ。若いのに、立派なもんだ。また、そういう話を聞きながら食べると、よりいっそう美味しく感じられるから不思議である。

「まるい食パンサンド」 色々な味がありどれを食べようか迷ってしまう
「まるい食パンサンド」 色々な味がありどれを食べようか迷ってしまう

 

☆ 「ヤンマーミュージアム」で、学んで、遊んで、体験して!

 

おしゃれなブランチでほっと一息入れた後、続いて訪れたのは、「ヤンマーミュージアム」。ヤンマー株式会社の創業者である山岡孫吉が長浜市出身ということで、ヤンマーの創業100周年を記念して、2013年3月にオープンした、“見てふれて乗って心動かす体験型ミュージアム”である。

ヤンマーといえば、「ヤン坊、マー坊の天気予報」。とっくの昔に放送が終わった今もなお、「僕の名前はヤン坊♫」というコマーシャルソングを覚えておられる方は多いだろう。しかし、逆にいえば、ヤンマーという会社について知っているのはそれだけ、それ以外のことはあまり知らない、という方も少なくないとも思われるが、そんな方でも必ずや楽しめる施設となっている。

「ヤンマーミュージアム」の外観
「ヤンマーミュージアム」の外観

 

ここでも副館長が案内してくれて、まずは「山岡孫吉記念室」で、創業者の足跡とヤンマーの歩みについてお勉強。山岡孫吉が世界で初めて小型実用化に成功したディーゼルエンジンが、ヤンマーの発展の礎となったことを初めて知る。

 

続いて、「農業ゾーン」で耕うん機やトラクター、田植え機、コンバインなどの農業機械の技術的進化の歴史を学んだり、「まちづくりゾーン」で本物のミニショベルを動かしたり。展示されている機械をただ観るだけでなく、実際に乗ることができるのがいいね。中には動かせるものもあって、まさに“子供から大人まで、”触れて、学べて、楽しめる。さらに、「ものづくりゾーン」では、缶バッチを自分でつくって、いいお土産に。「エネルギーゾーン」でも発電システムや空調システムなど、身近だけど難しいエネルギー変換技術を学べた。面白かったのはシミュレーター。これは、「海洋ゾーン」にある長さ11mのプレジャーボートの操船シミュレーターと、「研究開発ゾーン」にある本物のオペレーター訓練用のシミュレーターのことで、操船シミュレーターではほんとうに船を操縦している気分が味わえるし、オペレーター訓練用は、失敗してぶつかったときの衝撃まで体験できて、そのリアルさに驚く。

「ヤンマーミュージアム」内観 やっぱりトラクターなど農作業用機械が多い
「ヤンマーミュージアム」内観 やっぱりトラクターなど農作業用機械が多い

 

また、屋上にある「ヤンマーテラス」のビオトープで休憩したり、エンジンの熱を再利用した足湯で癒されたりもできる。さらに1階にカフェもあって、食事やお茶も楽しめ、1日中いても飽きることはない。ワークショップや広い会議室もあってさまざまなイベントを随時開催していますから、そうしたイベントに参加するのもいいだろう。こういう施設がもっと近くにあったらなあ、と思った。

「ヤンマーミュージアム」の屋上のビオトープ
「ヤンマーミュージアム」の屋上のビオトープ

 

☆ お昼は長浜名物!郷土料理の「焼鯖そうめん」を

 

「ヤンマーミュージアム」で大いに遊んだら、「まるい食パン専門店」でサンドイッチを食べてからそう時間は経っていないのにお腹が空いたので、お待ちかねの昼食を。食事は旅行の楽しみの1つ。せっかく来たからには、その土地ならではのものを食べたい。ということで、長浜の郷土料理は?と探したら、ありました。「長浜名物 焼鯖そうめん」が。

長浜には、「五月見舞い」といって、農家へ嫁いだ娘のもとへ、娘を案じる親が焼サバを届ける風習があるという。また、長浜の街を縦断する「北国街道」は、かつては別名「サバ街道」と呼ばれていた歴史もある。その焼鯖とそうめんを炊き合わせてつくる「焼鯖そうめん」が長浜の定番の郷土料理ということで、長浜市内には「焼鯖そうめん」を出す店がいくつかあるが、今回はその中でもマスコミに数多く取り上げられるなど人気の「翼果楼」を訪ねた。

「翼果楼」の外観
「翼果楼」の外観

 

長浜市のほぼ中央、北国街道沿いに位置する「翼果楼」は、築200年の古民家をそのまま生かしたとても風情のある店構えが特徴。この辺一帯は「黒壁スクエア」といって、昔の建物を生かした町並みが人気で観光客を集めているが、「翼果楼」もその中の一棟として町の景観に貢献している。

中へ入ると、昔ながらの土間があり、そこで靴を脱いで座敷へ上がる。小さな庭も眺められる座敷は、かつては生活の場だったようで、はじめてなのになぜか懐かしい雰囲気。そんな趣のある座敷でいただく「焼鯖そうめん」(900円)は、2日間煮込んだ鯖が骨まで柔らかく、甘辛い煮汁がそうめんによく絡む。一口食べて、旨い!というようなインパクトはないが、噛み締めるごとに味が深まっていくようで、素朴ながらもしみじみと美味しく、これこそ郷土料理だなあ、というような味だった。

「翼果楼」で食べた鯖そうめん
「翼果楼」で食べた鯖そうめん

 

今回はここまでです。

次回に続きます。どうぞお楽しみに (^^)

( 2017年8月26日寄稿 )