メイン

森田芳夫2009 アーカイブ

2009年01月01日

「変」の後遺症を引きずるであろう不透明な年、2009年を迎えて

明けましておめでとうございます。

 昨年の暮れ、世相を表す漢字に「変」が選ばれたとき、うまく言い当てているなと感じ入ったのは私だけではないでしょう。「百年に一度の世界恐慌」が引き金となり、旅の世界も今年は激変するのではないかと思われます。この2カ月ほど気になって考えていたいくつかを挙げて、皆さんに一緒にお考えいただきたいと思う次第です。

「観光立国日本」をめざして5年間をかけて準備し、昨年10月に誕生した「観光庁」の設立意図は、短期的に見ると全く時代に逆行する印象を与える結果となってしまいました。異常な円高から今年は来日観光客の激減が予想され、平成22年までに来日観光客を1000万人にする目標(平成18年/733万人)は危うく「画餅」となりそうです。このほか、同省の基本計画の中に「日本人の国内観光旅行による一人当たりの宿泊数を2.77泊(平成18年)を平成22年までに4泊にする」という具体的な数値目標がありますが、いつ底を打つかわからない経済不況の中ではとても国民の旅がやすやすとそうなるとは思えません。新年度にどのような施策を観光庁が打ち出し、実行していくのでしょうか。

 次に「新しい旅文化創造」を掲げて4月から朝日新聞社とJTBが業務提携するとの発表がありました。内容は新聞報道でしか知りえませんが、朝日が所有する旅行会社「朝日旅行」をJTBに譲り渡すが、その株式をなお朝日は33.4%を持ち「朝日はイベントやスポーツ事業の情報を提供をする」というものです。片やJTBは「朝日カルチャーセンター」に「JTBカルチャーサロン事業」を譲渡するとのことです。
 巨大マスメディアと強大旅行会社が提携するという、多分海外でも例をみない(少なくとも私は知らない)この組み合わせが、どのような旅を提案し、国民を巻き込んでいくか、読売新聞と旅行読売の関係とは比較にならない影響力を旅行業界に及ぼすと思われます。その展開を注目したいと思います。

chuokozosen.jpg
中央構造線博物館(大鹿村)の庭に表示された中央構造線の位置

 この数年間に「世界遺産の旅」など新しい旅の目的地が次々と生まれていますが、昨年12月8日、国内の7カ所が「日本ジオパーク」の指定を受け、新たな旅の目的地となる可能性を示しています。
「ジオパーク」はユネスコが支援する「地形や地層など特徴的な大地の構造が観察できる場」であり、自然遺産、文化遺産と対比されて「大地の遺産」と呼ばれいます。すでに世界に57ヵ所あり、今回の初指定はその日本版ということだそうです。
 南アルプス・中央構造線(長野県)、アポイ岳(北海道)などが挙げられていますが、ほかの5カ所は山陰、九州までに点在し指定されています。世界遺産と同様な新たな旅の目的地となることが期待できます。

 さて「旅ジャーナリスト会議」は、昨年はこの「旅じゃのブログ」の発信を始め、機関紙「トルヌス」・会員誌「旅行主義」の定期刊行、セミナー開催、月一回の例会とその改善を行ってきました。11月には「第24回トイレシンポジウム」の開催と実行に協力し、長野県伊那市の会場へ会員13名が駆けつけました。
 激動、激変の2009年、会員は一層足を地につけて、地道な活動を行い、旅にまつわる問題を結晶させ、問うていく所存です。
 このブログはもちろん、各分野での活動に幅広いご支援をくださるようお願いたします。

ankorotou.jpg
断層のズレがはっきりと見える安康露頭に立つ(大鹿村)

2009年元旦 旅ジャーナリスト会議代表:森田芳夫


【人気blogランキングへ】

2009年01月03日

2009年1月1日、浄められた元旦のグリンデルワルト

grindel.jpg

 スイスは日本人が最も好きな国として、いつもアメリカ、フランスより上位にある。
 中でも一番人気がある地域としてグリンデルワルト村はツェルマットとトップの座を競っている。
 
 1月2日朝、40年以上も前に村のホテルの一人娘フレーニさんと結婚した日本人、中島正晃(通称さいこう)さんから元旦の村を写した一枚がメールで送られてきた。
 ホテルの名は「ワルトホテル・べラリー」。百年以上の歴史を誇り、ヘルマン・ヘッセが宿泊したときの記帳も残る。村の南面に立つホテルのテラスからは、アイガーの北壁がのしかかるように見える展望の宿でもある。
 雪にすっぽりとおおわれた清浄そのものの村の景色は、ホテルの玄関からグリンデルワルト駅へ下る坂道の情景である。

 中島さんの人生遍歴は1979年、彼を主人公にした小説が東宝で映画化されているが、詳しく読みたい方には『グリンデルワルト便り』(山と渓谷社刊・中島正晃+土田玉江共著・1995)をお薦めしたい。本書から彼の人となりのほか、旅と観光に対するスイスの取り組みも同時に知ることができる。


投稿者:森田芳夫
【人気blogランキングへ】

2009年02月10日

コンピューター・グラフィックで見る「パノラマ伊那市」の冬の展望

cgina1.jpg

 日本で唯一、東西に3000m級のアルプスを仰ぎ、市街地の中央を川が流れる街、長野県伊那市はニ年前から観光宣伝の「冠言葉」を「パノラマ伊那市」と決定して市営の宿や観光パンフレットにこの「パノラマ」を冠して使用している。そして昨年できたばかりの伊那谷のパンフレットにも「山の展望がごちそうです」と表紙に書かれている。

 ここに謳われている「パノラマ」や「山の展望」が最も美しく見える季節が今、冬である。

cgina2.jpg

 この景色に魅せられ、一昨年の大晦日、伊豆半島から車を駆ってコンピューター画家・工藤省三さんが伊那市の西の丘を訪れた。横浜で建築設計に携わっていた工藤さんは西伊豆の史跡の町・松崎へ移住し、本格的に伊豆半島の海と里山の景観をコンピューターで絵画作品にすることに成功、その数はニ百点を越えた。その活躍ぶりはしばしば地元の新聞や中央の雑誌で取り上げられている。

 初めて伊那市を訪れ、純白の峰々が続く南アルプス連峰を見たとき、工藤さんは「これこそ神々が住むところ」と思ったという。その感慨をしたためた手紙とともに、できあがった作品が私に送られてきた。荘厳な雰囲気をたたえて左端に立つ山が仙丈ヶ岳(3030m)、右の扇を広げたような姿が間ノ岳(3198m)、さらに塩見岳(3052m)と雪をまとった山嶺が続く。写真ではなく、そして絵でもない、新しい手法の「絵画芸術」は伊那市の農業公園「みはらしファーム・いちご園受付」に常時展示されている。


投稿者:森田芳夫
【人気blogランキングへ】

2009年03月26日

会員・山田べにこさんのテレビ出演に思う

代表森田芳夫氏の寄稿につき本日急遽UPします(管理人)。

 およそテレビではニュースかドキュメントしか見ない私は、「大爆笑」とか「スゴイ女たち」などという新聞の番組表を見ると、スポーツ新聞のバランスを失した大活字の見出しを連想してしまい、見たいという気が起こらない。

 しかし3月23日放映の「ア然! 仰天! 大爆笑日本全国スゴイ女たち ○秘人生大公開」(テレビ東京)に、山田べにこさんが出演するという知らせを「旅じゃ.Com」で知り、チャンネルをあわせた。山田さんは「旅ジャーナリスト会議」の新しい会員であり、しかもこの分野では珍しい女流温泉研究家である。

 番組にラーメンの味を求めて各地をめぐる三十代の女性やら何人か女性が登場したが、山田さんの「温泉を究める努力」というようなものが、ひときわ異彩を放っていたと見たのは私だけではないだろう。

 最も心に残る場面は、スノータイヤを自分で付け替えて雪道を走り、さらに道の途絶えたところから歩いて雪に埋もれた無人の温泉に向かう様子だった。その先で、凍りついて逆立ってしまった髪の毛を撫でながら、同行の女性タレントと雪降る露天風呂に浸かる。そこで彼女がタレントに語りかけた言葉、「自然の中の温泉で、自然のままで楽しめていいじゃない?」はさらに印象に残った。

 私と同じように、着飾ってスタジオに並ぶ「ゲスト」たちも強い印象を受けた様子で、ほかの「スゴイ女」方とはまったく違うコメントが聞かれた。

「寝袋で車に泊まるあの努力はなんだろう」、「まるで『おしん』だ」という感嘆の声や「ナビ無しで北海道から鹿児島まで、女性がよく走れるな」という男性の声。中には「温泉には単純泉と言うものがあるが友達に『あいつは単純泉』と言ってやることがある」とギャグにもならないコメントがあり、これは不愉快だった。

 もし「温泉研究」にプロというものがあるとすれば、山田さんはアマチュアの心でプロを越えようとしているのではないか。その心と女性の視点をもって、貪欲に湯に浸かり、記録しながら、眼に見えない境界線を越えようと努力を重ねているのではないか。

 すでに2000を越す日本の温泉をマイカーで訪ねた記録は、山田さんのweb「べにこのおふろたび」で公開されている。

投稿者:森田芳夫
【人気blogランキングへ】

2009年06月15日

6月16日(火)19時30分、NHK総合TV『クローズアップ現代』に旅ジャーナリスト会議ゆかりの伊那食品工業が登場!

kantenpapagarden.jpg
したたるような緑の樹々と、高原の花園、更にヘルシーメニューをそろえたレストランが楽しい「かんてんぱぱガーデン」

 昨年11月当会が「協力」して長野県伊那市で開かれた第24回日本トイレシンポジウム、その交流会の会場となったのが「かんてんぱぱホール」(伊那食品工業内)でした。同社のトイレは清潔そのもの、それを平成18年の旅ジャーナリスト会議の取材旅行の折に目の当たりしたのが菊地正浩会員(当時の日本トイレ協会会員)です。氏の熱心な説得が日本トイレ協会と伊那市を動かして開催の運びとなり、我が会もささやかな協力をしたことは、しばしばこのブログでお伝えしたとおりです。

 伊那食品工業は社員のリストラ・給与カットが常識の今、「社員こそが開発力の源泉」、「急成長は敵」などを社是とし、寒天を中心とする食品産業で過去48年間、増収増益を達成してきました。利益は公共施設の建設など地域貢献にあて、芸術活動や山村振興など全国にわたる積極的なメセナなどを行っています。「会社は誰のため、何のためにあるか」を考えるこの番組で他の2社とともに紹介される予定です。

 卓越した企業理念で今日を築いた会長の塚越寛氏の存在は、すでにその著作『年輪経営』(光文社刊)やメディアを通して全国に知られていますが、観光にも鋭い意見をお持ちです。

 ぜひご覧いただくようご紹介する次第です。


投稿者:森田芳夫

【人気blogランキングへ】

2009年07月07日

19世紀のガイドブックをめぐる訴訟事件

schweiz1.jpg schweiz2.jpg
ベデカー『スイスSchweiz』表紙・ドイツ語版/1868年(明治元年)刊・改定11版


 定期購読をしている岩波書店発行の「図書」7月号が6月29日に届いた。

 表紙には1836年版『外国人のための新パリ案内』(18版)というガイドブックの「表紙」があしらわれ、表二に宮下志朗氏(フランス文学・書物の文化史)による解説がある。

 それによると、本書は1810年代に初版が出て、その成功に触発されて1827年に『真のパリ案内』なるものが発刊されたが、その内容は『新パリ案内』の窃盗品で構成されていた代物であった。そこで版元のモロンヴァル社は盗作の嫌疑で訴訟を起こし、罰金と偽版の押収という判決を得たという。以来「本扉の裏に手書きの署名が無い本は偽造である」と序文に書かれているという。

 これで思い出したのが『ベデカー・スイス』をめぐる訴訟事件である。

 19世紀の前半から中ごろにかけて、ドイツのベデカー(1801-59)やイギリスのマレー(1808-92)が発行した旅行案内書シリーズがシリーズ化した案内書の祖であることはよく知られている。

 前者のカール・ベデカーは1849年刊『ライン河の旅』(第6版)の序文でガイドブック(ハンドブック)刊行の意図を幾つか述べているが、その冒頭に「旅先で出費がかさむ案内人を雇うことなく、旅行者が本書に頼り、旅先で判断ができる「旅人の自主性」を身につけることを助成する」と述べている。

 ところで、手元にある『スイスSchweiz』の序文に10行ほどの「注」が設けられ、現地の案内人を訴えて勝訴した経緯が書かれている。

 その内容をかいつまんで紹介すると次のようである。

 N.N.というスイスの案内人が案内を依頼した旅行者に対し「『ベデカー』 はその本の中で推薦する宿から、40-50フランを取っている」と根拠の無い噂さを流していた。それを知ったベデカーは1856年9月N.N.を名誉毀損で訴えて勝訴し、そのことを10月21日、スイス国内の幾つかの新聞が「警告」として記事としたというものである。


 私もかつて手がけた案内書の文章や絵地図を模倣し、またはそっくり掲載した相手と何度と無く交渉をし、必ず相手が折れてきた経験をもっている。

 ひとつは著者や絵地図作家の権利を保持するためであり、もうひとつはそのまま放置しておくと、暗黙のうちに私が手がけた案内書が「模倣した」と受け取られ、立場がまったく逆になる恐れがあるからだった。


投稿者:森田芳夫

【人気blogランキングへ】

2009年09月24日

旅じゃBLOG終了の代表挨拶

 本日をもちまして「旅ジャーナリスト会議」のwebの旅じゃBLOG更新を休止し、 新たな発展をめざします。

 9月22日付で管理人である小出文彦・大谷直樹両会員からお知らせしたように、本日をもって当会の旅じゃBLOGを閉じます。

 2年9カ月にわたり、会の重要な活動の柱と位置付けて上記二会員が責任を持ってこのwebを維持してきましたが、今後は会の活動について詳細な報告と将来計画について公開し、さらに各方面からのご意見も聞ける内容にしたいと考えています。加えて会員各々の活動もお伝えすることを視野に入れた改革をめざします。このため、システムの再構築をする時間がどうしても必要です。ご理解の程お願い申し上げます。

 なお、このブログは本日で終わりますが、過去の活動記録として、いつでも見られるよう、そして雑誌のバックナンバー同様に楽しんでいただくようこのまま公開を続けます。

 今日までの各方面からのご協力に感謝し、さらなるご支援を賜りますようお願いする次第です。

2009年9月24日

旅ジャーナリスト会議代表 森田 芳夫

joushidentestu.jpg
(上毛電気鉄道/撮影:多賀泰彦)

投稿者:森田芳夫
【人気blogランキングへ】

About 森田芳夫2009

ブログ「旅じゃ.com」のカテゴリ「森田芳夫2009」に投稿されたすべてのエントリーのアーカイブのページです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のカテゴリは森田芳夫です。

次のカテゴリは渡邊恵美子です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。