ヨーロッパ鉄道旅日記(NW)

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「 セッテベロ 」

 世界一豪華! とイタリア国鉄が誇った特急電車の名である。1953年、日本の東海道新幹線が開業する10年以上も前に、イタリアに登場したこの電車。モダンな球形の前後展望車、そしてオール1等の車内はまるで動く応接間であった。ゆったりとした淡いブルーの座席、絵の描かれた扉でカバーされた荷物棚、豪華に仕立てられた室内は、実に優雅な旅を演出してくれた。後に小田急ロマンスカーや、名鉄ビスタカー誕生のモデルにされたことはあまりにも有名だ。

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 「7つの美」の意味を持つこのセッテベロと初めて対面したのは1974年の夏である。スペインからの夜行列車を乗り継いで、かなり疲れ気味の私は、まだ目の覚めやらぬままに雑踏のミラノ駅ホームを歩く。巨大ドーム下に並ぶのホームの中に、まるでヒロインのように、赤と緑のスカートを履いたETR300形式、セッテベロ号が停車していた。初めて対面したその時、憧れの電車に私はただ呆然とたたずみ、それまでの疲れも一瞬に消え去ったことを覚えている。
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やがて発車した車内では、さっそく前方展望室を満喫、そして、展望室後方の上部に設置された運転台を覗き込んだ。すると、「オーイ! 上がっておいでよ」と運転士が声を掛けてきた。そして私は、セッテベロ号運転台からの旅を楽しむこととなった。160k/h前後の速度でイタリアの平野を進むセッテベロの運転台は、我が新幹線の運転台と比べ、古典的な装置にも見受けられたが、並べられた計器類を見ると、イタリア国鉄の伝統と歴史の重さを深く感じさせるものがあった。

 「ピーピーー!」ハギレよい汽笛と、長年の友だったみたいに陽気に話す運転士の会話に、名画「鉄道員」の世界に溶け込んでいるような、セッテベロの旅であった。

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