旅のごはん (^Q^)アーン いただきまーす

冬になると行ってみたくなる町がある。それは長野県北部にある雪深い山里「飯山市(いいやまし)」である。

JR長野駅から飯山線に乗り、千曲川沿いに50分ほど揺られると飯山駅に着く。この町にはたくさんの魅力があるが、その中から郷土料理について紹介したい。

 

飯山線の車窓 千曲川の雪景色

 

訪ねたのは厳冬の1月中旬だったが天候に恵まれ、昼間は温泉や湧水そして雪景色を楽しんだ。そして日が暮れ、街が雪明りに包まれた頃、地元の友人が小料理屋へと案内してくれた。のれんをくぐると、白いかっぽう着姿の女将さんが笑顔で迎えてくれた。おいしい地酒とともに次々と料理が並び、偶然来店した友人も加わって、にぎやかな宴席が始まった。

まず目を引いたのは、てんぷらの盛り合わせだが、この土地らしいネタがそろっている。最初に「根曲竹(ねまがりだけ)」をほおばる。これは春先に採れる小さなタケノコのようなものだが、シャキッとした触感がたまらない。次につまんだのは、黒っぽいネタだが中身がちょっとわからない。興味津々、食べてみると、コロモの塩味の後にジュワーッと甘味が口の中に広がった。なんと中味は信州特産の干し柿だったのだ。ミスマッチと思いきや、何とも美味である。

 

てんぷら 根曲竹(左)と干し柿!

 

続いては「えご」が登場。これはエゴ草という海藻を煮て溶かし、羊かんのように固めたものだ。海産物の栄養を取ろうと、新潟との往来が盛んなこの地でも古くから定着した。淡白な味だが、海草の風味とザラッとした舌触りで、これを辛子醤油で食べると、日本酒との相性は抜群である。もっとも、料理も地酒も当地のおいしい水で作られたのだから、相性が良いのは当然だ。

 

『えご』は刺身コンニャクのように食べる

 

いくつもの料理を堪能した後、上がりには、富倉(とみくら)そばを食べた。普通のそばと違い、つなぎには小麦粉ではなく山ゴボウの葉の繊維を使うため、風味が豊かでのど越しがよい。そもそも小麦がぜいたく品で使えなかった時代に作られたそばだが、その珍しさもあって今では飯山の名物となっている。

他にもいろいろ食べたのだが、地酒の量が進んだせいか、記憶が定かではない。

この宴席に先立って、日中は飯山市内を散策したが、小腹がすいたので名物の「笹ずし」を食べてみた。その昔、川中島の合戦に向かう上杉謙信公に、地元の人たちが差し出したのが起源とも言われる。酢めしの上に錦糸卵、ぜんまい、しいたけ、くるみ、生姜甘酢漬けなどが乗せられている。

 

上杉謙信公も食べたという『笹ずし』

 

また、夕方、宿に着いた際に一息つこうとビールを頼んだところ、炒めた銀杏が一緒に出てきた。まだ熱い殻をむきながら食べてみると、コクのある味とビールのホップの香りが相まって、至福のひと時となった。

 

塩をまぶした銀杏

 

冬の飯山は雪深く、暮らしには苦労も多いと思うのだが、地元の人たちは豊かな自然の恵みを生かしながら、冬をうまく楽しんでいるように見えた。

飯山の人たちの、暖かさと冬を楽しむ知恵に支えられた旅だった。

 

( 2013年2月2日 寄稿 )

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