観光による地域振興(NZ)

 

栃木県足利市で「アートリンクinあしかが」というイベントが、12月23日(月)まで開かれている。

市内にある13カ所の美術館と画廊を見て回り、楽しんでもらおうという企画だ。訪ねた数にあわせて、エンジョイ賞やパーフェクト賞などの特典も用意されている。足利市は足利学校など古都のイメージが強いが、実はアートな見所も多い。

パンフレットには各施設の概要・催事、裏面には地図が載っている

 

< 足利市立美術館からスタート >
 早速このイベントに参加してみた。といっても時間に拘束されることもなく、好きな美術館や画廊を選び、訪ね歩けばいいのである。開催期間も長いので、1日で回り切る必要もない。
 最初にこの企画の拠点となっている、足利市立美術館へ行ってみた。すると駐車場は満車、館内も多くの人で賑わっていた。

足利市立美術館は市中心部にあり集合住宅が併設され、中心市街地の活性化も担う

 

地方の美術館でこれほどの賑わいは珍しいと思うのだが、NHKのテレビ番組「日曜美術館」で紹介された「ノート、夢のしるし 石田徹也展」が開催されていたのだ。
 また、地元在住の青年「川島直人展」も同時に開かれていた。作品には足利周辺の風景が鮮やかに描かれており、町の魅力を新たな視点で発見することができた。
 美術館を出るとその向かいに画廊があるが、入ったことがないので敷居が高い。しかし、「アートリンクinあしかが」のパンフレットを持っていると、それが入場券のように感じられ、抵抗なく店に入ることができた。店主も一見の客を暖かく迎え入れ、オリジナルの印鑑をパンフレットのスタンプ欄に押してくれた。

 

「足利市立美術館で開催の企画展」のパンフレット

 

< 北関東有数の集積地 >
 さて、なぜこのようなイベントが足利市で開かれたのだろうか?
 その訳を知ろうと、イベントに参画した「ギャラリー碧(へき)」のオーナーである山川敏明さんを訪ね、話を聞いてみた。
 すると、山川さんは「足利市は、北関東有数の美術館と画廊の集積地なんです。しかし、このことが意外にも知られていないし、生かされてもいない。そこで、これらの施設が連携することで、町を賑やかにしたいと思ったんです」とのこと。
 そしてこう続けた「ただし、民間だけ、あるいは行政だけでもうまくいかない、行政と民間の連携(リンク)が必要だと考え、このイベントを企画したわけです。」

 

ギャラリー碧(へき)は木箱のような建物で、これもアートな感じ!

 

< 町の資源 >
 これだけの画廊が集積するということは、同時に美術品のコレクターもたくさん住んでいるということになる。美術品の供給側である画廊と、需要側であるコレクターが共存しているわけだ。
 足利市には、谷文晁や中村不折(ふせつ)など、古くから多くの芸術家が訪れたという記録がある。また、近年では繊維産業が盛んな時期に、企業経営者がパトロンとなって芸術家を育てた。こうした長い歴史や文化の中で、美術を愛する風土が醸成されたのだろう。

 

< 屏風祭り >
 ところで、京都では祇園祭の時期に、商家などが表の格子を外して秘蔵の屏風や美術品を飾り、祭り見物に来た人々にも、通りから鑑賞してもらえるようにしている。これを「屏風祭り」と呼んでいるが、足利市でもかつてこのような行事を行っていたことがある。
 この手法を現代版にアレンジし「コレクターの持つ美術品を美術館や画廊で展示したい」と、山川さんは今後のアートリンクの構想を練っている。個人のコレクションが公開されれば、「足利にこんな立派な美術品があったのか」と市民も感動するに違いない。
 「特に若い人に見てもらうことで、我が町にこんなに素晴らしい美術品(資産)があるということを知ってもらい、それが地域の誇りであることに気付いてほしい」と山川さんは話を続けた。
 そして忘れてはいけないのが、当地には今後の活躍が期待できる若手作家がたくさんいることだ。アートリンクという空間は、彼らの活動や飛躍の場となるに違いない。

 

ギャラリー碧内展示物、地元出身の人気作家、菊地武彦氏(平面の作品)と牧田草平氏(立体)

 

< まちづくりを進める視点 >
 「アートリンクinあしかが」には、まちづくりを成功させるために欠かせない視点がいくつも含まれているが、主な点を三つあげてみる。まず一つ目は「公民パートナーシップ」であり、公共と民間がそれぞれの強みを生かしながら、協働することで実行力が高まる。二つ目は「地域資源の有効活用」で、地元ではなかなか気付かないが、他の地域にはない固有の資源に光を当てて魅力を発信することである。三つ目は「若者」で、次の世代を担う彼らは、鋭い感性と行動力を持ち地域活性化の原動力となる。

 

< アートはまちづくりの起爆剤 >
 過疎化に苦しむ地方において、アートの魅力で人を呼び、地域の活性化を実現する事例が増えている。例えば、瀬戸内海の島々を中心に開かれる「瀬戸内国際芸術祭」や、群馬県中之条町の「中之条ビエンナーレ」である。
 「アートリンクinあしかが」はまだ動き始めたばかりで、多くの関係者を取り込みながら持続させていくことなど課題も多い。しかし、アートなまちづくりが全国的に注目される中で、足利固有の資産を生かしながら関係者が協働することで今後の展開が大いに期待できる。

 

「アートリンクinあしかが」のサイト
http://www.watv.ne.jp/~ashi-bi/artlinkashikaga2013.html

 ギャラリー碧のサイト
http://g-heki.com/

 彫刻家 牧田草平氏のブログ
http://ameblo.jp/makitasohei/

( 2013)年11月15日寄稿 )

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