景観・暮らしを柱とする新しい観光地の在り方(MR)

 江戸川をはさんで東京と隣接する千葉県の市川市の中心街には大小数千本のクロマツが植えられ、しっとりとした暮らしの景観が、そこかしこに見受けられる。

 前稿で述べたように、クロマツは「市の木」に指定されている。自然豊かな文化都市としてのこの街の誇りはJR本八幡駅近くの市民談話室に設けられている「案内人」制度に示されていると言えよう。案内は無料、事前に依頼すれば用意された散歩マップを手に、案内人とともにテーマに沿ったルートをたどることができる。

 その散歩へ誘うテーマは「文学」、「雑木林」、「屋敷街」、「川と橋」、「坂と史跡」「花どころ発見」ほか実に多彩である。ところが名物のクロマツを訪ねるコースが見当たらない。その理由はなにか…。推察すると主に二つの理由が考えられる。

 まず名木に愛称がない。
 

「絵地図」

 日本三景の一つ「天橋立」の砂洲に立つ主なマツの名木にはそれぞれ名前があり、標識を探しながら、名の由来を知る楽しみがある。10年以上前に絵地図画家・久芳(くば)勝也さんが地元の依頼で描いた一部にその様子を見ることができる。

 

 次に考えられことは、クロマツの約三分の二が屋敷内にあり、根元からの姿がすべて見えるわけでないことだろう。しかし市川の路地には屋敷の外、塀などに接してなお多くの巨木や枝ぶりのよいクロマツが見受けられ、思わず目を見張る光景に出くわす。

<三本塀に立て掛けられたような写真>

 これは「菅野の三姉妹」とも名付けられるのではないか。

 

 そして覗くまでもなく、低い塀に囲われた邸宅の庭木は道からもよく見える。

<横枝が張ったクロマツの写真>

 これは「十字マツ」とでも呼べようか。

 

 いずれにしてもクロマツを巡るルートの設定がぜひほしいが、何より「命名」を先行すべきであろう。名木をまず選んで指定して公募をすれば、さらに市民の関心も高まるに違いない。

 

( 2012年6月9日 寄稿 )

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