日本ほっつき歩き

 

緑が深まる6月のはじめ、戸隠山の探鳥会に参加した。旅行ガイドブックを開くと「歴史」の文字が踊っている有名な山で、その森に入り鳥を見つけて楽しもうという旅行である。

探鳥撮影隊

 

日本書紀に登場している山で、天照大御神が高天ヶ原の天の岩戸に隠れたとき、力持ちで知られる天手力雄命(たじからをのみこと)がその岩戸を戸隠山まで投げ飛ばし地上に光を取り戻したとの伝説によりこの名前がついた。

 

山全体がきわめて脆い岩石で出来ているようで、すぐに崩れてしまう危険な場所が多い。そのためか昔から修験の場となり、山岳信仰の代表的な山となった。修験者は、周辺の山を含めて戸隠曼陀羅として考えていたようで、これらの山々が神そのものであった。

 

平安時代末は戸隠山顕光寺と称し、この時代はお寺である。比叡山、高野山と共に「三千坊三山」と言われ栄えていた。この寺を勢力下に置こうと、天台宗と真言宗が競い、最終的には天台宗の末寺となる。そして明治政府による神仏分離により神社になるのだから、神仏混淆の代表的な例といえる。戦国時代には、上杉と武田がこの地の修験者たちを味方につけようとこの寺の支配権を競っている。

 

これほどまでに歴史の深い山ではあるが、今回の目的は自然観察、探鳥である。山歩きのガイドに案内してもらい鳥を探す旅行なのだ。従って、戸隠神社には行かない。参道の入り口の随神門で2礼2拍手1礼を行い、山の神への参拝を終わらせる。ギリシャに旅行したのにパルテノン神殿を見ないで、アテネの下町をほっつき歩いて帰ってきた建築家がいるが、それに似た感じがしてほほえましい。人の好奇心に勝るものなしである。

随神門

 

私たちが行ったのは戸隠神社奥社参道の南側に広がる戸隠森林植物園だ。神聖なるがゆえに残った大切な自然林で、ここで平地では見ることの出来ない小鳥たちとの出会いが楽しめる。

戸隠森林植物園 地図

 

冬にスキー客などが利用するロッジに泊まる。探鳥はなんと言っても早朝がよい時間帯なので、日が登ると朝食も取らずにすぐに出発。

 

まずはキセキレイが登場。この鳥の兄弟分には、山にはセキレイ平地には白セキレイがいる。そして中間地帯にいるのがこのキセキレイだ。いつも石をたたいている様に見えるので「いしたたき」とも呼ばれているそうで、ピンと跳ねる尾羽が実に刺激的だ。剣道の達人がこの動きを真似たとも言われている。

 

森に入ると「小川のこみち」「水ばしょうのこみち」などとかかわいらしい名前のついた道がたくさんあって、くもの巣状に広がっている。道は枕木サイズの角材をしき並べた遊歩道で、歩きやすく整備されている。

デッキで作られた小道

 

きれいな黄色い色したキビタキがいる。次は「かわいい」小鳥の代表格コサメビタキ。この目のくりくりした表情に、バードウォッチャーはしびれてしまうのです。さて続いては、赤いアカハラに青いオオルリ、次々と出てくる色とりどりの小鳥たち。ノジコも登場、この小鳥の鳴き声は「信州そばとろろ付き」と聴こえると教わりました。さえずりを覚えるために、人はいろいろと苦労しているのですね。

 

さて、森での探鳥の醍醐味はなんと言ってもカッコウでしょう。「カッコウ、カッコウ」という明瞭な鳴き声に、木を突っついて虫を取る時のドラミングの音。実に存在感の高い鳥で、漫画や童話の主人公にもなっています。とにかく森のエンターテナーとして活躍している鳥なのです。野鳥を楽しむ面々は、この鳥を見にはるばるやって来たのですから、是非とも姿を見たい。しかし声はすれど姿は見えず、と思っていたら、空を悠々と飛んでいるカッコウを見ることが出来ました。カッコウは鳴きながら飛ぶのですね。

 

カッコウの仲間にはコゲラにアカゲラなどがいる。木の幹を走り回るゴジュウカラも多く生息しています。子育て真っ最中の巣穴を見つけては、餌を運ぶ鳥たちの写真をたくさん取ることが出来た。

 

東京から車で3時間ほど。新幹線ですと、長野まで1時間半で行き、それからアルピコ川中島バスに乗り1時間で戸隠神社に着きます。こんな体験が出来る山がまだ多くある、日本の山はドラマチックですね。

 

 

( 2015年8月15日寄稿 )

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