八幡平・岩手山、二つの火山をとりまく温泉郷と地熱発電所を考える  by 菊地 正浩

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岩手県八幡平市(旧西根町、松尾村、安代町)。西部には八幡平をはじめとする山々が南北に連なり、十和田・八幡平国立公園を形成。ダケカンバ、アオモリトドマツ、ブナなどの原生林があり、湿原や火口湖などの自然美が壮観な観光、交流の拠点となっている。

南部には岩手山が聳え、北東斜面には特別天然記念物の焼走り溶岩流が広がっている。

中央には緑が美しい安比高原があり、オールシーズン全国から多くの観光客が訪れる。

八幡平から火山湖と岩手山を望む

 

○数多くの温泉がある日本有数の湯治場

開湯269年の歴史を持つ松川温泉と松川地熱発電所を後にして、八幡平樹海ライン(R318)を走行すると、岩手・秋田の県境で八幡平山頂手前に藤七温泉がある。山道をさらに走行して秋田県に入ると、大深温泉、後生掛温泉(ごしょがけ)、蒸湯温泉(ふけ)、トロコ温泉、トロコ東温泉、志張温泉、銭川温泉、赤川温泉と続く。

蒸湯温泉
蒸湯温泉

 

樹海ラインを抜けR348を南下したところに、大沼温泉と澄川温泉がある。大沼温泉は沼名によるもので、ボーリングによって開発された新しい温泉で、酸性硫化水素泉71℃。澄川温泉は熊沢川の支流、赤川の渓谷沿いにあり、やはり酸性硫化水素泉55℃、湯治客専門の温泉として知られる。

R341をさらに南下すると、雪崩で被災しTV放映されたことのある玉川温泉と新玉川温泉、新鳩ノ湯温泉が続き田沢湖になる。近くには水沢温泉郷、田沢湖高原温泉郷と続き、秘湯として良く紹介される乳頭温泉がある。次にR46で再び岩手県に入り盛岡市を目指すと、雫石町に入り玄武温泉、ぬくもり温泉、網張温泉を経て岩手山の南麓側に着く。

このように、二つの大きな火山をぐるりと取り巻くようにして多くの温泉郷があり、良質な泉質と相俟って我が国でも屈指の温泉の宝庫となっている。

 

○大沼地熱発電所

秋田県鹿角市、大沼温泉地の奥に位置。昭和49年6月に運転開始。三菱マテリアル㈱、発電出力9500kw。自家用発電でPR館はない。発電施設の一部を見学することはできる。見学者のために施設の概要、発電の仕組みなどのパネルが置いてある。

現在、生産井7本、熱水送水管の先には還元井3本となっている。新しい生産井の櫓が組まれ、掘削中であることも判る。

大沼地熱発電所
掘削中の生産井

 

○澄川地熱発電所

秋田県鹿角市、澄川温泉の奥に位置。平成7年3月に運転開始。東北電力㈱と三菱マテリアル㈱、発電出力50000kw。現在、閉鎖されておりPR館も休館中で、残念ながら状況不明。

澄川地熱発電所

熱水送水管

 

○葛根田地熱発電所

岩手県雫石町、烏帽子岳の北麓、滝ノ上温泉の奥に位置。1号は昭和53年5月に運転開始。東北電力㈱と日本重化学工業㈱、発電出力50000kw。2号は平成8年3月に運転開始。東北電力㈱と東北地熱エネルギー㈱、発電出力30000kw。現在、閉鎖されておりPR館も休館中で、残念ながら状況不明。

 

○松川地熱発電所(別途書き込みをご参照)、大沼、澄川、葛根田の四か所があるが、松川と大沼はそれなりに稼動していた。澄川と葛根田は不明である。地元で取材の限りでは減衰や枯渇といった、表立った被害については聞かれなかった。国立公園の中である、今後とも変化について注視していく必要があろう。   

 

 

( 2014年9月9日寄稿 )