安くて安全な高速ツアーバスは「新高速乗合バス制度」に移行できるのか①  by 多賀 泰彦

 ●高速ツアーバスのハーヴェストライナーが倒産

 

新宿センタービル前に停車中の蓼科・車山方面行きの高速ツアーバス(トラビスジャパン)

 

 7月20日の朝10時過ぎ、新宿駅西口の新宿センタービル前から1台の高速ツアーバスが出発した。行き先は「蓼科・白樺湖・車山」とステッカーで表示されていた。乗客も慣れているのか、スムースに路上からバスに乗り込んでいった。

トラビスジャパンのバスに乗り組む旅行客は慣れたもの

 このツアーバスは、4月末の関越自動車道の高速ツアーバス事故が起きるまでは、事故を引き起こしたバス旅行会社ハーヴェスト・ホールディング(ハーヴェストライナー)によって運行されていたものだった。事故後、運休していたコースを新しく長野県上伊那郡箕輪町に本社のあるバス旅行会社のトラビスジャパン(花バス観光)が引き継ぎ、7月1日から同じ時間帯とコースで運行したものだ。その一方、ハーヴェスト・ホールディングの方は、7月2日に自己破産し、7月6日には廃業へと追い込まれている。

 ハーヴェストライナーは、大阪に本社があり、大阪・名古屋~TDL(東京ディズニーランド)や、金沢・富山~新宿・東京駅・TDLなどの夜間高速ツアーバスをメインコースとしながら、昼間の空き車などを活用して、東京駅・新宿駅西口から長野県の蓼科・白樺湖・車山・蓼科牧場方面や、清里・八ヶ岳方面など長野県方面への高速ツアーバスを走らせ、利用客も多い高速ツアーバスとして知られていた。事実、地域の施設やホテルなどでは自社ウェブサイトに、この高速ツアーバスを〈リゾートライナー〉として、利用を勧めている例も多く、高速ツアーバスの利用を前提とした宿泊プランを組んでいるホテルもある。関越事故後、バス便が運休し、困惑していた施設もあったが、7月1日からトラビスジャパンによる運行再開にホッとしているところも多いようだ。

 この新宿駅西口~蓼科・白樺湖・蓼科牧場(ホテルアンビエント蓼科)への高速ツアーバスはテレビの旅番組でも登場していて、料金が片道2000円~2400円(休前日)として評判になったもの。トラビスジャパン運行になり、2400円~2900円(休前日)と約2割程度の値上げとなっている(高速ツアーバス自体が値上がりの方向にある)。それでも、蓼科牧場まで新宿駅からJR中央本線利用で茅野駅経由の路線バス代込みで、通常片道4460円、特急〈あずさ〉利用だと7070円となり、直通ツアーバス利用の方がはるかに安く、人気の高いことが分かる。とりわけ、蓼科牧場へのローカル路線バスの本数が少なく、この高速ツアーバスが旅行者にとっていかに便利なものかが理解できる。

 

 ●インターネット予約の時、表示内容を確認して

 さらに7月20日から、国土交通省の「高速バス表示ガイドライン」が策定され、高速ツアーバスのバス車両とインターネット上の表示方法が定められた。この新宿駅西口から出発していくトラビスジャパンのバスもそれに応じて、車両の入口に「高速ツアーバスであることと、企画実施会社がトラビスジャパンであること、運行の貸切バス会社が有限会社の飯綱観光であること、そのリスト番号が表示されていた。

高速ツアーバスの乗車口に貼られた表示

 運行が400kmを越えるツアーバスの場合には、車内に、①関係する事業者名、②運行経路、③実車距離、④交替運転者の配置計画などの表示が義務付けられている。この蓼科へのツアーバスは走行220kmで、400kmを越えていないので、運転者の交替の必要はない。

 さらに、国土交通省のガイドラインによれば、インターネット上の予約広告サイトなどの表示にもチェックポイントが示され、表示を必須とする事項として①高速乗合バス(路線バス)と高速ツアーバスの区別、②運行会社、③実車距離、④所要時間(見込み)、⑤運転者(例・2名乗務、1名乗務)、⑥安全運行協議会(高速ツアーバスの場合)、⑦任意保険・共済(例・対人無制限)、⑧乗降場所の明記。さらには「高速ツアーバス事業通報窓口へのリンク」、「高速ツアーバス運行事業者リストへのリンク」のバナーを入れることも定められている。トラビスジャパンの予約サイトの「高速バスツアー予約net」にも、各データが明記され、二つのリンクバナーが貼られている。

 

高速バス予約netには、安全のための必要事項が掲載されている

 

 

 Webサイトに記載された情報は、少し手間暇がかかるが、高速ツアーバスに乗車する前に、旅行者として確認しておいた方がいいだろう。それにしても、バス旅行会社のwebサイトに国交省の二つのリンクが貼られていることが義務化されているのは気になるところだ。特に、「事業通報窓口」へのリンクは、ツアーバスの運行の欠点を旅行社のwebサイトを通して利用者から国土交通省に直接通報させているのは如何なものだろうか。また、この間の事故の遠因ともなった、規制緩和の行き過ぎについての責任をどう取るつもりなのか、国交省と、ツアーバスの業界に聞いてみたいところだ。

 

( 2012年8月4日 寄稿 )

 

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