ーその3ー  by 有田 慎二" />

和歌山県・新宮市を訪ねて(1日目)ーその3ー  by 有田 慎二

NO IMAGE

 

仲氷店で味わう「並んでも食べたいかき氷」(日経新聞より)

 

お寺めぐりの途中に立ち寄った、「仲氷店」もぜひ紹介したい。ここは日経新聞が発表した「並んででも食べたいかき氷・西日本編」で第9位の店だとか。9位って微妙!?と最初は思ったけど、西日本全体で9位ならたいしたもんだし、地元の情報誌やガイドブックでは常連といえるほどしばしば取り上げられている有名店。またその店構えがいいじゃない。いかにも昭和の雰囲気で。

冬にかき氷を食べるのもいまや当たり前?と言いつつオーダーしたのは、人気だというスイカ氷。でも、まあ、これは今時の言葉でいえばインスタ映えはするが、せっかくのフワフワの氷をガチガチに固めてしまうから、フワフワが好きなら普通のかき氷をおすすめする。和歌山県南部を流れる古座川の良質な源水を濾過し、72時間かけて凍らせた氷を、空気を含ませながら薄く削ったかき氷は驚くほどフワフワだけど、若干のシャリシャリ感も残しているのがいいあんばい。じゃばらをはじめ地元ならではの多彩なシロップもGOOD! 美味しくて、頭がキーンと痛くならないかき氷を提供しているご夫婦の人柄の良さも感じられ、かき氷で体は冷えるが心はポカポカ暖かくなった。

「仲氷店」の外観
「仲氷店」の外観

 

左がじゃばら金時450円、スイカ氷は各200円
左がじゃばら金時450円、スイカ氷は各200円

 

 

熊野比丘尼の絵解きを体験!

 

寺めぐりを終えると、日も暮れたので、「熊野荘」で夕食を。熊野木材で造られた純日本建築の建物が特色の宿。だけど今回はここには泊まらず、食事のみ。そして食事の前に行われたのが、熊野比丘尼による「新宮参詣曼荼羅」と「熊野歓心十界図」の“絵解き”、である。

熊野比丘尼は、中世から近世にかけて、地獄極楽の“絵解き”をしながら諸国を巡り歩いた尼僧のこと。今回は昼間寺めぐりの案内をしてくれたガイドさん(瑞泉寺の門の写真の人)が比丘尼に扮して“絵解き”をしてくれた。ガイドさんも色んなことやりますねえ。

なぜ熊野比丘尼が全国を歩いたかというと、その目的は熊野三山の勧進。いうなれば熊野の宣伝のためで、熊野比丘尼は今で言うキャンペーンガールだったんですよ、とガイドさん扮する比丘尼は仰る。しかし、よくよく聞けば、比丘尼が旅するための路銀は、熊野三山から出るわけではなく、逆にお布施を集めて熊野三山へ納めていたというから、宣伝と同時に集金の役目もあったのだろう。

それはともかく、“絵解き”の内容は、つまり人間が地獄に落ちたらこんな目に遭うんですよ、という、子供の頃によくお寺なんかで聞かされる話。とはいえ、嘘をついたら舌を抜かれるといった単純なものだけでなく、徒労を延々と強いられる地獄など、意味深なものもあって意外に面白い。とくに比丘尼が熱心に語っていたのが、不倫したものが落ちる地獄、だったのは、最近の世相を意識してのことだろうか。

この“絵解き”は、熊野速玉大社のすぐ近くにある「河原家横丁」で土日祝日に実演されているので、一般の観光客でも気軽に見ることができる。問い合わせは「まちなか情報センター」(0735・23・2311)まで。

“絵解き”の後は、「熊野荘」自慢の料理に舌鼓。名物のさんま寿司をはじめ、盛りだくさんの海の幸山の際を地酒とともに堪能し、満腹を抱えて本日宿泊のビジネスホテルへ向かった。途中、シメに新宮ラーメンを、と思ったが、さすがに満腹なので、後ろ髪を引かれつつ、今夜はおとなしくチェックイン。新宮の夜の徘徊は次の機会にとっておこう。(2日目に続く)

「熊野荘」外観。ちょっと見えにくいけど、松の木がいいねえ
「熊野荘」外観。ちょっと見えにくいけど、松の木がいいねえ

 

「新宮参詣曼荼羅」の絵解きをする熊野比丘尼
「新宮参詣曼荼羅」の絵解きをする熊野比丘尼

 

「熊野荘」の料理。さんま寿司は左の刺盛りに
「熊野荘」の料理。さんま寿司は左の刺盛りに

 

「和歌山県・新宮市を訪ねて」の1日目は、以上です。

 

( 2018年2月25日寄稿 )