● 運賃が安くなるのか、高くなるのか、「高速ツアーバス」はどこへ行く  by 多賀 泰彦

高速ツアーバス死亡事故の衝撃が続いている。ツアーバス企画会社のハーヴェストホールディングスのバスは、5月24日現在も全便が運休中である。

ハーヴェストライナーは運休中(ホームページから)

高速ツアーバスの団体である「高速ツアーバス連絡協議会」(事務局は楽天バスサービス)が5月16日に、自主的な指針を決め、国土交通省に届けたという。協議会の資料によれば、夜間450キロ以上の運転は交代運転手を配置する。安全管理に問題のあるバス会社とは契約をしない。利用者向けのネットに交代運転手の有無や事故時の補償の内容を明示する。乗客全員の名前や、年齢、性別を把握するなど、かなり細かいものになっている。

一方、国土交通省も大臣名で、同日に高速ツアーバス連絡協議会と日本バス協会に対し、高速ツアーバス等の安全対策強化に関する要請書を発表した。
要請事項として、
①運転時間の基準及び交替運転者の配置見直しが実施されるまでの間の当面の措置として、夜間の長距離運行において交替運転者を配置する等自主的な安全対策を確実に実施 すること。
②高速ツアーバスをバス事業のあり方検討会の報告を踏まえた方針に則って、「新たな高速乗合バス」に出来るだけ早期(新制度の施行後1年以内を目標)に移行することなど、数点に及んでいる。この「バス事業のあり方検討会」は国土交通省の肝いりで、学識経験者と業界人などで平成22年から平成24年4月まで開かれたもの。その結論が高速ツアーバスの「新たな高速乗合バスへの移行」だった。

少し長くなるが引用すると、
◇高速ツアーバスは実態としては高速乗合バスと同様の定時・定路線での運行であり、高速乗合バスと同じ規制の下で、乗合バスとして運行することが適当。◇高速乗合バスと高速ツアーバスのそれぞれの長所を活かし、「柔軟な供給量調整」や「柔軟な価格設定」等が可能な新たな高速乗合バス規制を導入。
◇高速ツアーバス事業者に対し、新たな高速乗合バスへの移行を強力に指導・支援し、新たな高速乗合バス規制の下での一本化を図る。(平成24・25年度が集中移行期間)
◇関係者の協力を得つつ、移行に必要なバス停留所の確保を支援。
以上がそのポイントである。

WILLER EXPRESSはツアーバス会社としては珍しく、自前のバスターミナルを持っている

今までの「路線バスの高速バス」も「高速ツアーバス」も無くして、新たな路線バスとしての高速バスにしようとしているのか、その内容がはっきり見えてこない。運賃はどうなるのか、料金の高い高速バスが安くなるのか、料金の安い高速ツアーバスが高くなるのか、規模の小さい会社は存続できるのか、 旅行者の立場から見ても疑問だらけで、しばらくは事態を注視する必要がありそうだ。事故の前に方向が打ち出されていたことではあるが、今後国土交通省は実行をより迫ってくるだろう。

高速ツアーバスの最大手であり、高速ツアーバス連絡協議会の会長も務めるバス旅行会社WILLER TRAVELのPR誌を見ると、「これまでツアーバスとして運行してきたWILLER EXPRESSは、国が定める新たな高速バス体系に加わることで、ご利用者様にとってさらにシンプル&安心な乗り物へと進化します。2012年、WILLERの高速バス全路線が新高速バス(路線バス)へと移行することで、もっと安心便利に、よりわかりやすいピンクのバスへとバージョンアップします。」と書かれている。同じページには2011年の同社の乗客数が192万人で2016年には400万人を目指すとも記されている。

ターミナルのある新宿住友ビルのバス駐車場を出発するWILLER EXPRESS 

いったい高速ツアーバスはどうなっていくのか、安くて安全な乗り物として育つように旅行者として見張っていきたいところだ。

( 2012年5月26日 寄稿 )

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