夜行の「高速ツアーバス」に乗ってみる①  by 多賀 泰彦

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新高速乗合バス制度では、交通弱者を忘れないで!
 

 この夏に、高速ツアーバスを利用して東北へ出かけてみた。

 往きのバスは新宿駅西口発、東北新幹線古川駅方面行き、帰りの高速ツアーバスは盛岡駅西口から利用した。

深夜12時近くに新宿駅西口を出発するオリオンツアーのバス

 深夜の新宿駅西口の指定された場所では、ツアーバスの係員が「受付を!」と声かけていた。歩道上には利用客がたむろし、独特の雰囲気。しばらくして指定された号車に案内され、乗車口の座席票を確認して座席に着いた。

ツアーバスの係員のチェックを受け、路上で待機する乗客(新宿駅西口)

 

 オリオンツアーの便名2111便スタンダードという内容のツアーバスであった。バスの乗車口には、国土交通省によって決められた「高速バス表示ガイドライン」に沿って表示が貼られ、「高速ツアーバス 企画実施旅行会社・株式会社オリオンツアー運行貸切バス会社・仙台西観光秋泉バス(株)No222」となっていた。期待した自社運行バスではなかったので黄色の車体のオリオンバスではなかった。バスのフロントガラスには、「オリオンバス仙台・古川、2112便-15号車」とシールが貼られていたので、増便だったのだろうか。オリオンツアーの親会社が、格安ツアーで知られるHISだけに、その内容を見てみたかったのだが…。

ガイドラインの表示がこんなところに貼られていた

 車両は4人掛けの標準的な観光バスである。車内には、これも決められた車内掲示がTVのブラウン管に貼られていた。ワープロの小さな文字で表示されたものを見てみると、「運行経路・実車距離」は11時55分発で福島駅、仙台駅に立ち寄り7時に古川駅着になっていた。

 途中で3か所のトイレ休憩があり、運行距離は485km、11時間15分。「運転者の配置計画」は2名、「車両の初度登録年月」は平成15年3月と記されていた。

 車内はほぼ満席、筆者の席は、2Cで前の席2席は控え運転者の席。どうしたことか、2Dの席が予め空いており、少しくたびれた観光バスの足下が狭い座席が二つ使え助かった。高齢者に対して配慮でもしてくれたのであろうか。インターネットで申し込むとき年齢の欄があったことを思い出した。

以前、長野県の伊那市、駒ヶ根市方面に聴力の障がいある人と、何度か中央高速バス(乗合バス)で出かける事があり、ネットの「ハイウェイバス・ドットコム」で予約をしたことがある。障がい者当人は運賃が二分の一で計算され、すぐに予約できた。あとは当日に障がい手帳を見せればいいだけだった。

「ハイウェイバス・ドットコム」の予約画面から

 この「ハイウェイバス・ドットコム」は高速乗合バスだけを扱っているが、新高速乗合バス制度に移行した時もこの制度は継続するのだろうか、また今までの高速ツアーバスは、移行後にこういった仕組みを取り入れてくれるのだろうか。交通弱者への取り組みも、バス交通の社会的責任として取り組んでほしいところだ。

 高速ツアーバスは4時35分福島駅前で12名降ろし、5時50分に仙台駅前で28名降ろし、7時過ぎに最終目的地の古川駅前で降りたのは、4名ほどだった。バス料金は、福島・仙台まで4000円、終着の古川まで4500円だった。東京駅から古川駅前まで高速(乗合)バスなら6500円、新幹線を利用すると東京駅から1万1110円だから割安感はある。

 仙台西観光秋泉バスという妙な名称のバス会社は、後で調べて見たら仙台郊外の秋保温泉に本社のある観光バス会社だった。国土交通省の「高速ツアーバス運行事業者リスト」によれば、保有貸切バス7台の会社である。

 この後、新幹線古川駅で一休みし、目的地の気仙沼まで、ローカル線のJR陸羽東線と気仙沼線(柳津駅まで)とミヤコーバスを利用した旅へ出発した。柳津駅から気仙沼駅までは東日本大震災のため気仙沼線は不通。代替えバス(この8月20日からは気仙沼線の代行バスとして、BRT〈Bus Rapid Transitバスによる大量高速輸送〉が走り出している。)は、もろ東日本大震災の被災地を走っただけに強烈な印象が残ったが、震災地の鉄道とバスの関係は別の機会に述べてみたいとおもう。

柳津駅前発、気仙沼行きのミヤコーの代替えバス

 古川駅から柳津駅まではJRで740円、柳津駅前から気仙沼駅までの路線バスは所要2時間10分、運賃は、1500円だった。気仙沼に宿泊後の旅も、気仙沼駅から大船渡線が不通のため、気仙沼駅前から盛岡駅まで、途中大船渡(盛)乗換えで路線バス(岩手県交通)を利用してみた。

津波による被害は激烈だ。代替バスも砂利道を走るところもあった。写真は気仙沼線「志津駅」付近

 ちなみに気仙沼から大船渡・盛まで路線バスで約1時間10分、1060円、大船渡・盛から盛岡駅前までは路線バスで約3時間、2700円で、利用客はそれぞれ10人にも満たなかった。とにかく今回の旅は路線バスが無ければ不可能だった。

〈夜行の「高速ツアーバス」に乗ってみる②〉ヘ続く〉 

( 2012年9月4日寄稿 )