塩屋崎灯台からの眺望はいつの日になるか  by 菊地 正浩

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 映画「喜びも悲しみも幾年月」の舞台、美空ひばりの「みだれ髪」で知られる白亜の灯台が、東日本大震災からほぼ一年、やっと閃光を発するようになった。

 塩屋崎灯台は本州の東端にある房総の犬吠埼と宮城県と石巻港のほぼ中間に位置する岬の突端にあり、海上からは約50mの高台にある。明治32年12月に完成、高さ26m、フルネル式回転閃光塔で、光達距離は約37km、20秒間隔で8500カンデラの閃光を発する。洋上を航行するフェリー、貨客船、漁船などの指標になっている。

 筆者も何度か灯台まで急な坂道を登っては、太平洋の眺望に目をやり遠くサンフランシスコを連想した。眼下には、いわきの海岸でも屈指の海水浴場「薄磯海岸」が広がる。

 ようやく灯台の閃光が再開されたとはいえ、大津波による被害は附近一帯の景色を一変させてしまった。灯台への坂道も通行止となり、海産物の土産店、浜焼きを食べさせる店などもなくなり、訪れる観光客もない。勿論、海水浴場も開かれない。

< みだれ髪の歌碑 >

灯台下にある歌碑と記念碑
 あの大津波にも耐えて奇跡的に助かった。歌碑の前に立つと、懐かしい歌声が響く。観光客で賑わっていた時には気づかなかったが、音量が大きいのに驚く。 誰一人いない荒廃した塩屋崎灯台の下、星野哲郎作詞、船村徹作曲の「みだれ髪」を改めてしみじみと聞いた。

 

春は二重に巻いた帯 三重に巻いても余る秋 
暗らや涯てなや 塩屋の岬  
見えぬ心を照らしておくれ ひとりぼっちにしないでおくれ 

 

 本当に今は、「ひとりぼっち」にされている。早い復興によりこの地が活力を取り戻し、ひばりが元気に歌える日が待ち遠しい。

 

男女別もない工事現場用の仮設トイレ①
男女別もない工事現場用の仮設トイレ②

 ここには立派な観光地トイレが設置されていた。今は大津波で破壊され建物だけが残っている。その前に仮設トイレが5個置かれている。永年、日本トイレ研究所の一員として観光地トイレや災害時トイレなどについて活動してきたので、つい目にとまり気になる。

 仮設トイレは工事現場用として作られているので、不特定多数の観光客などにはきめ細かさが必要である。高齢者、子ども、障害者、男女別、手洗い(感染症対策)などである。要するに、段差、手すり、洋式などの配慮が必要で、工事用仮設トイレを並べれば良しとすることではない。

 少し北上した所に破壊された四倉港で復興中の「道のえき よつくら」がある。ここの仮設トイレは同じものだが和式・洋式の標示、障害者用もある。

道の駅よつくら(テント式の仮営業)と仮設トイレ①
道の駅よつくら(テント式の仮営業)と仮設トイレ②
道の駅よつくら(テント式の仮営業)と仮設トイレ③

 折角訪れる観光客のために、仮設トイレのあり方に気を配って欲しい。

( 2012年6月23日 寄稿 )