十和田観光電鉄と長野電鉄屋代線の廃線を考える  by 多賀泰彦

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 2012年3月31日に二つの私鉄線が廃線に追い込まれる。少し硬い話になるが、その推移を見てみよう。

 一つは東北の十和田観光電鉄で、全線(三沢駅~十和田市駅14.7km)が廃線になる。十和田湖や奥入瀬(おいらせ)渓流観光の入口としても利用された私鉄だが、東北新幹線の八戸~新青森間の開通により、七戸十和田(しちのへとわだ)駅が開業し、三沢駅経由の観光客などの乗客が減ったことと、悲しいことだが、東日本大震災による観光客の減少がその理由だという。

 

十和田観光電鉄

 もう一つは、信州の長野電鉄屋代線(屋代駅~須坂駅24.4km)である。長野電鉄の場合も乗客減による赤字がその原因だという。この長野電鉄屋代線も途中駅に松代(まつしろ)駅をかかえ、廃線されると観光地松代の地盤沈下につながると見られるだけに残念なことである。

長野電鉄

 

 二つの廃線私鉄線を並べてみると、十和田観光電鉄線は電鉄側が赤字状態の自社経営内容を地元の鉄道活性化協議会で十和田市、六戸町、三沢市の3市町に訴え、10年間で5憶2100万円の支援要請をしたが、3市町側は先が読めないとし、支援要請を拒否。廃線が決まったという。長野電鉄屋代線の場合も鉄道活性化協議会で赤字の屋代線継続の論議とサイクル(自転車)トレインなどの試行がなされ、しかも松代などで廃線反対運動も起こったが、結局、協議会で議決を取りわずかの差で廃線が決まったという。

 日本の経済力低迷と人口減少期を迎え、地方の企業がローカル線を経営するのは極めて難しい。電車の運行、乗客へのサービスとレイルや架線の保守など1社で担えば、赤字になることは目に見えている。「いすみ鉄道」や「若桜鉄道」のように経営を上下に分け上の部分に当たる運行は私企業の運行会社で行い、下の部分に当たるレイルや施設など運用は、公的な県・市町村が担えば、存続も可能になる路線も増えるだろう。たとえば路線バスはバスの運行は私企業があたり、道路は国道や県道が使われている例が多いのだから。老人など弱者にとって必要な鉄道、とりわけ赤字ローカル線の問題は、公的助成(支援)が必要というのが一つの結論かもしれない。

 

( 2012年4月26日 寄稿 )