小湊鉄道沿線は花だらけ

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今年の春は会の年刊誌『旅行主義』4号の編集に追われて、近辺の満開のサクラの風情をろくに楽しめなかったが、4月10日に取材で乗りに行った房総半島の内陸を走る小湊鉄道の沿線で、散りかかる風情を楽しむことができた。でも八重や枝垂れなど、満開のサクラもあちこちで見た。
写真は高滝駅を裏手から撮ったものだが、菜の花、ヤシオツツジ、ボケ、レンギョウなどが一斉に咲いて、一瞬ここは地上の天国かと錯覚するほど見事な花園だった。
小湊鉄道の沿線はすべてが田舎っぽく、自然にしっくりと溶け込んだ人の暮らしが、なぜかとても懐かしい。沿線にはちょうど満開を迎え菜の花が、田んぼの水とよく映えている。
車窓から見ていてもじかに風と光には触れられない。地図を見て道路と線路が着かず離れずに走る区間を発見、思い切って線路沿いに高滝・里見駅間ひと駅を歩いてみた。畑を耕す私より若い「おじいさん」とたあいない話を交わしたり、竹林からぬっと走り出てきた電車を撮ったりして、房総のわき道で私は期待以上の至福のときを過ごした。
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終点の上総中野のひとつ前の駅が、紅葉で有名な「養老渓谷」。その前の駅から乗ってきた菜の花を手にした男の子の小学生がここで降りた。車中で写真を撮ろうとしたら、男の子は泰然としていたのに、隣りに座っていた高学年の姉のほうが「イヤー」といって腰を浮かした。
駅前には養老温泉の旅館の名をつけたバンや、大型の車がずらりと並んで待っている。さすが!と思いきや、お客さんはすべて自分んちの小学生、かわいいわが子たちだった。紅葉の時期でないと、客待ちの車はないよと、駅前のラーメン屋の元気なおばあさんが教えてくれた。
菜の花いっぱい、春たけなわの田園を走る電車を狙い、あちこちで私が乗った車両めがけてカメラを向けていた人を見かけた。しかし、まだこの沿線には鉄道写真マニアのエアポケットというべきスポットが山のようにある、と見た。そして、どの車両にも若い美人の車掌が勤務、検札に回ってくるたびに車内にはとてもやわらかい空気が流れ出し、そのたびに私は車窓風景色から一瞬目をそらした。
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養老渓谷駅発17時01分下りのプラットホームで待っていたのは、私と一匹の猫だけだった。
投稿者:森田芳夫
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