県外生活者と福島をつなぐフリーペーパー「吹く島」の発刊  by 長谷 戴子

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 昨年3月に起きた福島第一原発事故は思いもしなかったたくさんの難民を作り出してしまった。家や田畑、家畜や仕事、思い出での詰まった様々な品々などを置いて避難を強いられた人たちの多くは、一年半経った現在でも懐かしい故郷へ戻れないでいる。避難所を転々としている間に体調を崩したり亡くなったり人も少なくない。

 中でも深刻なのは、母子だけの“自主避難者”である。国や専門家の情報が信じられない中、子どもの健康が心配で県外へ避難を決断したものの、家族や友達と離れて慣れない土地で暮らすのは、経済的、心理的負担が大きい。

 一方、県内に残った人も、子どもの健康や制限だらけの日常生活、将来への不安など、「残る」という選択肢が正しかったのかと、やはり気持ちが揺れることが多いという。

 

 こうした中、福島に残った人と県外生活者をつなぐ“架け橋”になることを目指したフリーペーパー「吹く島」が発刊された。

 

フリーペーパー「吹く島」 創刊号・6月号の表紙

 6月の創刊号は、新潟市の避難者支援センター「ふりっぷはうす」の紹介と、「ふくしまの思い」として、それぞれ状況の違う三人へのインタヴュー記事が掲載されている。三人のお嬢さんと山形へ避難中の女性の活動と思い、浪江町から避難して、福島市の仮設住宅で暮らすことになった男性のせつない心境、福島市に残って仕事の傍ら「福島の今」を発信している女性の思いを載せている。

三人のお嬢さんと共に山形に避難をしている中村さんへのインタヴュー記事(6月号)

  ほかに各種情報やイベント案内もあり、カラフルだがスマートなレイアウトは、行政が作った広報誌とは段違いの仕上がりで、読んでみたいという気にさせるのではないか。

 

 すでに8月にNo.2が発行され、今後も隔月発行が予定されている。 残念なのは、B4判なので活字が小さく、シニア世代には読みずらいこと。「そうですか、やっぱり… 」と編集人の齋藤正臣さん。同様の声があるらしい。

フリーペーパー「吹く島」 創刊2号・8月号の表紙

 震災直後に福島市内の飲食店で働く人たちが炊き出しを始めたのがきっかけで、その後長期的な支援活動を行うため、NPO法人ライフエイドを立ち上げたという。その事業の一つが「吹く島」だ。

 県外避難者は、平成24年5月現在、山形県12,607人、新潟県6,521人を始め日本各地に62,038人いるというが、その人達に「福島に安心して帰ってこられる未来を造る」ため、会員や広告を募って息の長い取り組みをしていきたいと話す。今のところイギリスに本部を置くローズファンドからの支援で何とか4号まではまかなえそうとのこと。

 また8月発行の第2号(特集・アートからの復興)からは、福島市との協働事業(行政ではやりきれない部分を支える)で、県外で生活する各世帯に市政だよりと梱包して送付できるようになり、助かっているそうだ。この「吹く島」はインターネットでも見ることができるので、ぜひご一読を。

 この地震列島にあれだけの原発がひしめいていれば、福島の悲劇は「明日はわが身」となりうるのだから。

見開き記事「子ども達が元気で遊べる施設」(8月号10~11頁)。福島市とその周辺では原則として遊びはインドア。これが福島の現実!

< 支援および問い合わせ先 >

〒960‐8031 福島市栄町9-5栄町清水ビル2階 

特定非営利活動法人福島ライフフエイド フリーペーパー【吹く島】編集部 

電話:024‐521‐2342(サイトウ洋食店内)

E-mail:fukushima@f-lifeaid.org

 

 ( 2012年9月17日寄稿 )