八丈島の「あしたばそば・うどん」  by 菊地 正浩

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東京都伊豆諸島・八丈島は都心から約290kmにある。都道を走る車、駐車場の車全てが「品川ナンバー」である。しかし、南国の雰囲気を感じさせる離島で、同じ東京都といっても気候も風土も違う。都心でコートの必要な時期でも海水浴をしている。

今年になって八丈島の無人島八丈小島で、クロアシアホウドリの生息が確認された。

国際自然保護連合のリストで、絶滅危惧種に指定されている大型の海鳥である。世界で最北の繁殖地になるらしく、八丈島の新たな観光資源になると思う。

その島は黒潮がもたらす豊富な魚の料理など、風土が恵んだ食材の宝庫である。

中でも野菜の代表「明日(あした)葉(ば)」は別名を「八丈草」といい、古くから八丈島に自生する。葉、茎、根も食べられ独特の苦味を持つセリ科の多年草で、ビタミンの多い健康野菜として注目されている。文化8年(1807)、大賀郷村の名主菊地秀右衛門武昌が、新島から赤サツマイモを持ってくるまでは貴重な食糧であった。

溶岩質の土壌で水田がなく米が獲れない島では、古の人々の工夫により、そば、うどん、天ぷら、おひたし、ゴマあえ、味噌汁、お茶など多くの飲食に利用してきた。

いま摘んでも明日には芽を出すほど元気な野菜から呼ばれるようになった。地元の人は勿論、年間を通じて観光客に人気があり、食べなかったという人の話は聞かないほどである。八丈島での「旅のごはん」は、「あしたばそば・うどん」といっても過言ではない。

 

そば合月の「あしたばそば」
そば合月

 

 

そば一休庵の「あしたばうどん」 あしたばてんぷら付
そば一休庵

 

山裾の野生明日葉

 

 

「島人の命の種のアシタ草 朝な夕べに煙立つなり」

源 為朝

 

( 2013年6月25日 投稿)