「美人の女将さんのいる店」  by 小川 金治

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いつの時代も男と云う者は、美人の存在に弱い。会いに行けるアイドルが「AKB48」なら、会いに行ける美人の代表格は「美人の女将」や「美人のママ」だろうか?

当会の会員A,Hさんは、長年大手旅行会社で添乗員の教育に携わってきた。世界100カ国以上を訪問している旅のエキスパートでもある。温厚なお人柄で、博識でもある。メールでの交信で、僕の沖縄取材(7月7日から15日)を知ったA,Hさんは、日程を併せて所用で事務所を訪れた。用件を済まし、帰り際に何気ない素振りで鞄からコピー紙を取り出した。
 店内

 

 

 

「美人の女将さん」がいますよ。

手渡されたのは「創作沖縄料理 珠膳」のパンフレットのコピーだった。そこには暖簾越しに、和服姿の美人の女将さんが微笑んでいた。パンフレット其の物ではなく、それをコピーした物を渡した事が、A,Hさんの複雑で揺れる男心を表しているのだろうか?A,Hさんは国内の諸事情にも精通しているらしい。その日から胸を時めかして、7日のフライトを待った。

 

記録的な台風8号の接近で、フライトに多少の遅れが出たが無事に那覇空港に到着した。モノレール美栄橋駅近くの定宿のホテルにチェックインし、直ぐに近くのスーパーに食料の買い出しに行った。台風の影響で溢れる客の中、三食分の食料と飲み物、それに泡盛の古酒を購入。台風への備えが出来たら、シャワーを浴び、身支度を整える。卸立ての甚平に着替え、扇子、染めの手ぬぐいと用意万端整え、台風8号の予兆が出始めた那覇の街に繰り出した。

 

店の暖簾を潜ると和服姿の女将さんが、ハイビスカスの花の様な笑顔で出迎えてくれた。夏の着物姿は清々しく、帯に描かれた赤い金魚が涼を呼ぶ。店内にはジャズが静かに流れ、黒を基調としたシックな雰囲気の中に、朱色のカウンターテーブルが鮮やかに映える。

 

女将さん

 

先ずは、オリオンビールで女将さんと乾杯して一息つく。棚を見渡すと、様々な泡盛の瓶がズラリと並ぶ。その中から「春雨」古酒(クース)のボトルを注文した。「春雨」の酒造元は、那覇市小録にある小さな酒蔵だ。生産量より変質に拘った酒造りをしている。「癖のある泡盛が好きなのですか?」と女将さんの問いに、「僕には癖が無いから。」と噛み合ない会話が楽しい。料理も心づくしの手作り料理で、小皿で取り分けてくれる。酒飲みには、色々な味の肴を楽しめるのも嬉しい。水割りが美味しくなると云う魔法を念じて作ってくれる泡盛は、いつも以上に旨く感じピッチがあがる。夜も更けてくると、女将さんが三線を爪弾き「与那国小唄」を唄ってくれた。酔った瞳の先に、ハイビスカスの花が優しく揺れていた。

 

刺身盛り合わせ

 

 

魔法に掛かったのは僕の方かな?

「与那国小唄」の軽快なリズムに合わせ手拍子する。僕の贅肉も小刻みに揺れていた。台風8号の襲来を目前に、幸せな那覇の夜は深けて行った。

      情け島〜♪ サノサッサ♪

 

 

「創作沖縄料理 珠膳」

900-0013 

那覇市牧志2−17−44

電話090-869-7039 

営業:月〜金 18時〜24

 

 

( 2014年8月7日寄稿 )