南イタリア旅行ホテル騒動記(その1)  by  弘實和昭

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65歳の誕生日を迎え、自分へのご褒美に南イタリアへ旅することにした。妻と二人で、ナポリ周辺のアマルフィーやポンペイ、ソレントなどを観光し、プーリア州の集落などを回る10日間の旅行である。まずは4ヶ月ほど前にインターネットの格安航空券を15万円ほどで購入し、続けてホテル予約と現地ツアーをやはりネットで購入した。予算は一人30万円以内にしようと思っていた。ヨーロッパに行くのはこれで10回目、そのうち半分は旅行会社のツアーで、個人でのんびりと行くのは久しぶりであった。

 

ホテルは、アムステルダムに本拠を置く旅行代理店のホテル予約サイトで予約する。ホームページにはホテルの内観写真やらホテルの位置を示した地図などが掲載されてあり、それを見ているだけで半分旅行したような気分になってしまう有り難いサイトだ。最初の3日間はナポリ中央駅に近いホテルを予約した。ダブルルームで1日1万3千円ほどのお手頃価格の部屋である。さすがインターネットの情報力はすばらしいと、予約してからしばらくの間は喜びに浸っていた。準備は万全である。

 

飛行機はまずローマまで行き、ナポリ行きのローカル便に乗り換える。成田空港を昼過ぎに出発で、フライトは13時間だが、8時間の時差があるためローマには夕方の7時に着く。2時間ほど待って乗り換え、ナポリ空港着は夜の11時近くになる。それから入国審査を済ませてタクシーでホテルへ行くのだが、到着は深夜の12時近くになってしまう。さて、はたして予約したホテルを探し出して無事にチェックインできるのだろうか。物騒なことで世界に名立たるナポリの街である。ホテルに入れなくて路上でさ迷うという事態になってしまったらどうするのだろう。自分一人であればどうにでもなるが、女房と二人である。こんな事になった場合には、激しい言い争いになるのは必至で、せっかくの旅行を台無しにしてしまう。そこまで考えて、急に不安が広がって来た。

 

慌ててホテルの内容を確認し直すと、24時間チェックインは可能と書いてあった。ホテルに入れないということはなさそうだ。まずは安心できるが、さらに面倒がないようにと空港からホテルまでのタクシーもネット予約をすることにした。現地で普通に乗れば3千円ほどで済むのだが、予約で申し込むと9千円になってしまった。悔しいけれど仕方がないか。

 

ナポリ空港に着き、予約してあったタクシーに乗り込みホテルへ向かう。ホテルまでの地図を運転手に見せるが、「ああ、了解了解。」という感じで真面目に見ようともしない。目的地は地図上ではっきりしているのだが、なんとタクシーはその前を通り過ぎ、違うホテルの前に止まって「到着しました。」とすましている。慌ててのホテルが違うことを告げ、名前と住所を再度伝え、地図を改めて見せると、運転手は会社に電話をしてなんとか理解した様子で、再び動き出しようやく目的のホテルの前に到着した。その建物にある巨大な扉の横に、小さいプレートが張ってあり、そこに予約したホテルの名前が書いてあった。成る程これは見つけにくい。

 

古い宮殿の2階を改造してホテルとして利用。どこが入り口なのか?

 

元貴族の館であった大きな建物で、年代を感じさせる木製のドアがしっかりと閉まっている。古い建築を改造し、オフィスや店舗、住まいなどが入り混じる雑居ビルになっている。2階がホテルとして利用されていた。タクシーの運転手がインターフォンでフロントと話してくれ、子扉を開けてもらい中に入ることが出来た。そこは大きなエントランスホールで、1階の階高が6m以上もありそうだ。

 

恐ろしく古いエレベーターで2階まで行く。ヨーロッパの古いビルのエレベーターは、犯罪を防ぐためか多くが鉄格子のシースルーである。しかも扉の開閉は手操作だ。一つ一つが面倒で緊張する。廊下にあるガラスのドアを開け入っていくと、カウンターの中に臨時雇いに見える従業員がいて、まずは無事にチェックインが完了した。

 

エントランスにある共用エレベーター。操作がわかりにくい

 

案内された部屋の床は大理石張りである。大理石は掃除がしやすく耐久性が高いので、ヨーロッパのホテルの床は大理石張りが多い。さて、ベッドに乗ろうとして驚いた。高さが高いのだ。70センチほどもあり、食卓テーブルほどの高さである。私は酒を飲んで寝ると極めて寝相が悪く、寝ながらホテルのベッドから転げ落ちたことを何度も経験している。ここで落ちたら・・・、大理石の床に頭を打ち付け血を流す自分の姿が脳裏に浮かび身震いがした。ベッドはシングルを二つくっ付けて置いただけのダブルベッド。ヨーロッパでは普通である。「仕方がない」と落ちないように女房殿にしがみついて眠ることになってしまった。貴重な体験である。

 

前編はこれで終わりです。次々回は後編です。お楽しみに!!

(その1)はこちらから → http://tabija.com/south_italy_v2

( 2015年1月29日寄稿 )