隠された太陽-ふるさと高知の明け暮れ-  by 川村 太洋

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高知での生活を始めて少しずつ、私の心は上向いている。その一つには、こちらでの生活のリズムが、私の生理に合っているようである。

 

今は仕事もできるようになったが、東京にいた一時期、私は心労が重なり倒れていた。生活がまわらなくなり、一旦、故郷の高知に帰ることにしたのである。かくして、高知での生活が始まった。土地によって一日に、独特のリズムがあるが、東京と高知ではやはり違う。

 

 

私は今、高知のリズムに乗って生きている。そのリズムに合わせるように、私の心も動いている。私の一日の流れは南国高知では、太陽が大きく関係している。太陽が昇り始めると、朝の光を全身に受ける。すると、少し気合が入る。段々と、太陽が高くなるにつれ、私の気持ちも上向いていく。夕方になると昼の光は弱くなり、夕焼けになる。田んぼも、川も、道も夕陽の色に変わる。この土地まで太陽の光は確かに、届いているのを実感する。

 

その光の中にいると、仕事や生活の疲れがすっと、抜けていくような感覚になる。気持ちも軽くなったような気がする。そして、この一日のリズムは、心の調子を整えるのに良いと感じるのである。息詰まる生活に、風が入るのだ。

 

 

東京での生活を思い返してみる。そういえば、私は太陽が落ちていくのを見た記憶がない。密集した建造物に隠されていたのである。朝が始まり、昼の光から夜のネオンの明かりに変わると、夜であった。少なくとも私の東京での生活はそうだった。東京で生活していた時の名残だろうか、時々、賑やかな東京の生活にまた憧れる時もある。結局、私はどちらの生活も好きであるが、今は高知での生活を満喫している。

 

 

( 2015年2月20日寄稿 )