手漉き和紙の里(1)~西の内紙2  by 菊地 正浩

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 山方町では伝統的な紙漉き技術を残すため、紙のさと和紙資料館を開設した。ここの技術は昭和46年(1971)、県の無形文化財に指定された。和紙は中世の佐竹氏時代から漉かれていたが、水戸光圀が紙の生産に力を入れ、領内に楮(こうぞ)、三椏(みつまた)を植えさせて奨励した。この和紙は水戸藩のみならず江戸表へも出荷され、御用紙、商人の帳面紙、所謂大福帳などとして好評を博し、やがて「西の内紙」として有名になった。水戸光圀が有名な大日本史編纂に用いたのがこの和紙である。
 西野内が和紙生産の中心になりえたのは、良質な原料の楮と久慈川支流の清流、加えて農閑期を利用し優れた漉き手が多かったことと、久慈川の水運にも恵まれたとされる。
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和紙資料館のネリ黄濁葵(左)と楮と黄濁葵を混ぜる(右)
 西野内紙の特徴は原料が楮皮とネリの黄濁葵(とろろあおい)だけで漉(す)かれ、他の三椏や雁皮(がんぴ)などは混入していないことで、強靭さと防虫に優れ、保存に適した紙である。戦時中は軍用にも供され、落下傘紙、風船爆弾にも使われた。現在ではわずかな製紙所の人々によって伝統が保たれている。
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紙のさと和紙資料館 茨城県常陸大宮市舟生90
●JR水郡線中舟生駅から徒歩5分。入館無料。9~17時。水曜休(8月は無休)。TEL0295-57-2252
すき絵体験は1000円(材料・郵送費込)で要予約。所要2時間程。

( 2009年1月31日 寄稿 )