北海道の動物たち(第5回タンチョウ)

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ツル目ツル科ツル属。全長130~140cm、翼開長220~230㎝、体重7~10kg。羽毛は全体に白く尾も白いが、長くて黒い風切羽に覆われているため、立っている時はこの羽が垂れて黒い尾羽のように見える。頭頂から後頭部は皮膚が裸出して赤く、これが「タンチョウ(丹頂)」の名前の由来。道東の湿地帯、主に釧路湿原に生息する特別天然記念物。アイヌ語ではサルルンカムイ(湿原の神)と呼ぶ。日本で見られる7種のツルのうち、唯一日本国内で繁殖する。
 江戸時代から明治時代にかけて乱獲され、一時は絶滅したとみられていたタンチョウ。1920年代に釧路湿原で再発見され、1940年代から保護の取り組みが本格化した。保護区域を設け、住民による給餌によって生息数は約1000羽まで回復した。しかしこれで安心できるというものではない。人間と野生動物の間で起きるトラブルは互いの生息区域が重なり干渉し合うからで、ここでも人間のエゴによる犠牲が絶えない。人家の周辺では電線にぶつかったり、車や列車との衝突、農薬や鉛などの重金属摂取による死亡など、タンチョウにとって決して住みやすい環境になったとはいえない。
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 冬期の餌の不足する間、鶴居村や釧路市の給餌場ではタンチョウに餌を与える。それを観光客が見に来ることで、冬の大きな観光資源となっている。動物園ではない場所で動物が見世物になっているようで、個人的にはあまり気分はよくない。それでもタンチョウに対する理解と見識が深まればいいのだが…
 タンチョウは湿原の神と呼ぶに相応しい優美で神々しい姿をしている。雪原で舞う姿も、青空を背景に群れて飛ぶ姿も被写体としてとても魅力的だ。写真撮影を趣味にしている人なら一度は冬の釧路湿原へ行くといい。天から舞い降りた神に会えるのだから。
第6回オオハクチョウ(8月25日)につづく
投稿者:渡邊恵美子
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