新幹線を運転する5

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untendai2.jpg 運転台風景のイメージ
0系アーカイブ。その前に、この文章は単なる新幹線の説明ではなく、運転士から見た体験談を描いています。これから先新大阪まで、運転士になったつもりでこのアーカイブを読んでいただくと、おもしろいですよ。さあ、一緒に出発しましょう。
ひかり5号博多行き。16両編成の長さは、1両25メートルX16。400メートルは実に長く感じ、有楽町の駅にさしかかって運転席小窓越しに後ろを覗いても、まだ最後部は東京駅を離れていない。電車は銀座数寄屋橋日劇を横に眺めながら在来線と並行して進む。古き良き時代を物語った日劇も今は近代的ビルに変わり跡形もないが、当時東京を発着の時には、運転旅の疲れを癒やす東京のシンボルでもあった。田町付近までは在来線と並行して走る。時折横に肩を並べる湘南電車の、窓越しの手を振る子供達に警笛で合図を送る。真横に並ぶと、湘南電車の運転士もかなり意識顔でこちらに目を向けているようだ。
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やがて左手に、東京運転所車両基地の長い車庫横を通過(今は品川駅と超高層ビルの街に変貌している)、八つ山のトンネルをくぐり抜けると、S字に大きくカーブをしながら高架線を進んでいく。
「制限90!!」
田村氏が歓呼する。多摩川付近までは、住宅密集地の上を走るためカーブが多く、速度規制が続き、ノッチを小刻みに動かしながら進む。新横浜駅手前で、ATC信号が初めて210Kを表示する。信号歓呼とともにノツチを最大の10まで刻む。ひかり号は相模平野を210K最高速で走り続ける。このあたりは切り通し沿いに線路が続き、上に住宅や線路を跨ぐ橋が多い。
untendai1.jpg運転台風景のイメージ
「先月の交番でね、夜9時頃かな? このあたりで(マグロ)の確認に当たってしまってね! 大変だったよ」
助手席の田村氏に話しかけた。
「三島への回送で、運転台も一人だったし、暗がりの線路を30k以下の速度でゆっくり前方を探しながら走り、それらしきものを発見した時は、冷や汗ものだったね」
私は夢中で話こんでいく。人身事故を業界用語で(マグロ)と言っている。跡処理がまぐろに酷似しているところがあるからだ。人身事故に遭遇して、200Kの速度から最大ブレーキをかけても、停止するまでには約2KMは進む。事故地点の検認は、時間の都合上後続の列車が行う(現在は上り下り関係なく、近くの列車が行うようです)。
「遭遇する人は2度3度続くみたいだし、神社で清めてもらうようだよ」
田村氏が答える。マグロの話題の続くなか、ひかり号は小田原も定時で通過。トンネルをいくつか過ぎると熱海駅。熱海駅はカーブしたホームで待避線もない為、110Kに速度を落とす(現在は180Kで通過)と熱海駅を通過、新丹那トンネルをくぐり抜けると三島で田村氏とハンドル交代だ。
次は豊橋まで彼が運転だ。春雨のなかをひかりは西へ。パート6につづく!
投稿者:にわあつし
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