会員からの著書新刊1

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『「地圖」が語る日本の歴史』(暁印書館)
~大東亜戦争終結前後の測量・地図史秘話~  菊地 正浩著
ISBN978-4-87015-160-4 定価1890円(税込)
『地圖』に込められた、敗戦日本復興への想い。敗戦時の混乱の中にあって祖国日本の復興を念願し、生命を賭して貴重な地図原版と組織を護り抜いた、若き大本営情報参謀の実録。東京大空襲で奇跡的に助かり、父君はルソン島で戦死した著者が文字通り参謀の足跡を辿るとともに、秘蔵の史・資料を駆使して万感の思いで綴った、大東亜戦争終結前後の歴史的『地圖』秘話(元国土地理院長 金窪敏知)

我が国の近代地図史については、歩測による測量と天体観測により、日本の地図を作った「百万歩の男、伊能忠敬」抜きにしては語れない。
しかし、明治維新後は欧米の技術を導入して、日本の地図は勿論、大東亜共栄圏構想に基づき、支那・満州・朝鮮・東南アジア等々の外邦図を沢山作った、大日本帝国参謀本部陸地測量部を抜きにしては語れない。所謂、近代地図史の幕開けである。
この陸地測量部の組織と測量・地図技術と地図原版(銅版)を、敗戦時の混乱の中にあって、祖国日本の復興を念願し生命を賭して護り抜いた若き大本営情報参謀がいた。
この男の終戦時正式な肩書きは「大本営陸軍参謀、情報第二部、陸地測量部担当少佐、渡辺 正」である。
陸地測量部を解体、内務省地理調査所への看板架け替えという離れ業によって、戦後GHQ(連合国軍総司令部)の接収から救ったのである。
その時歴史を動かしたこれら一連の出来事がなければ、我が国の測量・地図技術は20年遅れたであろうと言われている。当然、現国土地理院も異なった歴史を辿ったことであろう。
この陸地測量部から地理調査所を経て、国土地理院誕生までの数奇な運命を、戦後60年余秘匿されてきた史・資料を公開して、取材と現地調査により万感の想いで綴った実録である。
第一は、昭和20年8月9日から10日にかけて開かれた御前会議において、天皇陛下のご聖断により戦争終結となる。この時から陸地測量部の組織存続と、明治以来営々と築いてきた測量・地図技術を、我が国復興のため遺そうと奔走した秘話である。
それは、8月15日正午の玉音放送を挟み、わずか2週間の8月31日には陸地測量部を解体、9月1日に内務省地理調査所へと看板を架け替えてしまうというドラマである。
第二は、9月23日から27日までの秘話である。
GHQのマッカ-サ-司令官は、8月31日に厚木飛行場に到着して横浜入りするや直ちに指令を出した。「地図は全ての基本だ、それを確保せよ!」「松本地区に参謀本部の資産が色々とある。その中でも陸地測量部を点検・接収する」という内容であった。
そして「視察団に随行する将校を一人だけ出すように」と要求があつた。この時渡辺参謀に白羽の矢が立ったのである。
9月23日、日比谷のGHQ本部を出発した。フォ-ドの黒いセダンを先頭に、ジ-プ4台、計5台の車列であった。
一行は9月27日に帰京するが、この間の出来事こそ日本の地図史で、その時歴史は動いたの一瞬に遭遇する。まさに渡辺参謀の苦渋と緊張の5日間の実録である。
この時、地形図の原版(銅版)が救われたからこそ、戦後すかさず地理調査所(現国土地理院)が地形図等を発行し、我が国の復興に役立てたのである。
筆者は旅ジャ-ナリストとして、戦後60余年経った昨年、同じ季節、同じ時間にあわせて、出来るだけ同じ行程を辿り、当時の渡辺参謀の心境を追体験した。
以下、地図の統制時代の秘話を含め、主な目次を紹介する。続きを読むへ。
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投稿者:菊地正浩
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はじめに
・日本の地図を作った「百万歩の男・伊能忠敬」/日本の測量・地図技術を救った男「参謀・渡辺少佐」/終戦前後の陸地測量部/渡辺参謀のプロフィ-ル
第一章 地理調査所(現国土地理院)はこうして誕生した
・ベ-ルを脱ぐ陸地測量部から内務省地理調査所へのドラマ/明治以来積み上げた測量・地図技術を救うために/「陸地測量部を存続させましょう!」/陸地測量部の廃止と組織移管に向けて/木製の看板「内務省地理調査所」
第二章 日本地図史に残る運命の一瞬
・GHQ(連合国軍総司令部)視察団松本へ行く/運命の一瞬「これは何だ?」/地図原版(銅版)を確保/陸軍戦史には「地図が不可欠」~渡辺参謀の記述/近代古地図は戦争と共に/「兵要地理調査研究会」の立ち上げ~米軍の関東上陸は何処か~
第三章 昭和20年のドキュメンタリ-~行ってみるまで知ることなし~
その一 我が国の地図史に残る意見具申の行程を辿る
その二 GHQ視察の行程を辿る
・9月23日、日比谷第一生命ビル(GHQ本部)を出発/大垂水峠越えで相模湖へ釜無川沿いに韮崎から小淵沢・信州蔦木宿を経て諏訪湖へ/篭坂峠越えから富士山の須走を横目に御殿場へ/箱根街道に入り最後の難関長尾峠越えから宮ノ下へ
第四章 地図の統制時代
・日本統制地図㈱設立/整理統合による地図業界/社団法人地図研究所(後の日本地図学会)設立
第五章 終戦前後の秘話
第六章 国家基準点の史蹟を訪ねて
第七章 風化させてはならない話~つらい地図づくり
第八章
・全国主要都市戦災概況図~昭和二十年十二月・第一復員省編~/民間地図会社による東京大空襲戦災焼失図