長野県 東御市「ワイン&ビアミュージアム」を訪ねて
~ワイナリーへのコンシェルジュが誕生~
by 野﨑 光生

長野県 東御市「ワイン&ビアミュージアム」を訪ねて<br>~ワイナリーへのコンシェルジュが誕生~ <br>by 野﨑 光生

温泉とワイン

涼を求めて長野を旅した。

山々を望む広々とした景色を眺めながら、高原の温泉にのんびりと浸かりたいと思った。

そこで、久しぶりに東御市(とうみし)にある温浴施設「湯楽里館(ゆらりかん)」を訪ねることにした。

最近の様子を調べてみると、なんとそこには「ワイン&ビアミュージアム」が新設されていて、地元のワインやクラフトビールについて学ぶことができるとのこと。
温泉とワイナリーを、1ヵ所でコンパクトに旅することができそうだ。

 

湯楽里館からは八ヶ岳や東御市の町並みが見渡せる

 

 

 

浅間山麓からの眺め

東御市は長野県東部の浅間山麓に位置し、上信越自動車道で練馬インターから同市の東部湯の丸インターまでは約170km、およそ2時間と首都圏からのアクセスも便利なところだ。

インターから車で5分ほどのブドウ畑の中に、温浴施設「湯楽里館」がある。ここでは温泉に浸かりながら八ヶ岳や北アルプスを眺め、眼下に広がる東御市や上田市の町並みを見下ろすことができる。

さっそく露天風呂の温泉に浸かると、高原に吹くさわやかな風が心地よい。旅の運転で疲れた肩こりがほぐされるようでからだが楽になった。

そして、風呂の外に目を移すと、雲で八ヶ岳こそ見えなかったが、それでも近隣の山並みや緑色の里山に囲まれた町並みが美しく見渡せて、心までも癒された。

 

「ワイン&ビアミュージアム」は温浴施設の2階に

 

 

「ワイン&ビアミュージアム」が誕生

この施設の2階に「ワイン&ビアミュージアム」が4月に誕生したとのことで、温泉に入りがてら訪ねてみた。

東御市はブドウ栽培に適した風土があるため、ここ数十年でワイナリーが集積し、周辺の市町村とともに「千曲川ワインバレー」と呼ばれるようになった。

ミュージアムではこれらのワイナリーや湯楽里館に隣接するビール工場など13の施設について、その沿革や特徴がパネルでわかりやすく紹介されている。

 

ワイナリーをわかりやすく紹介

 

 

ワインをテイスティング

さらにここにはワインやビールをテイスティング(試飲)するコーナーも設けられている。

「エノマティック」という本格的なワインサーバーには、8種類のワインがセットされている。

試飲の都度20mlか40mlのグラスを選ぶことができ、100~500円と手軽な価格設定だ。支払いは専用のカードを使うシステムになっている。

つまり、ここではパネルでワイナリー情報を目で見て、試飲コーナーでワインの味と香りを舌と鼻で確かめることができる。そして、お気に入りのワインやワイナリーを見つけることができるというわけだ。

温泉に浸り景色を楽しんだ後、風呂上りに飲む冷えたワインの味は最高で、いろいろな銘柄を試してみた。

テイスティングだけのつもりだったが、地元産のワインの味が後を引き、気に入った味のワインを売店で求め、持ち帰ってまた楽しむことにした。

 

説明を受けながらワインを選ぶ

 

 

 

おしゃれな雰囲気

ミュージアムでは、パネルもおしゃれな感じで展示され、用意されたパンフレットも洗練された雑誌のようで、若い女性が手に取り見入っていた。

訪ねたのは夕方だったが、温泉帰りの夫婦や家族連れが立ち寄り、「どれを飲もうかな?」などと楽しそうに話しながら、ワインを味わっていた。

 

雑誌のようなおしゃれなパンフレット

 

気軽に立ち寄りワインを楽しんでいる

 

 

風土と人

東御市にワイナリーが集積し、このミュージアムができたのは、ブドウ栽培に適した風土があったという理由だけではない。ここに至るまでには多くの人たちの存在が欠かせなかった。

中でも、画家でエッセイストの玉村豊男さんの功績は大きい。1991年に約500本のブドウ苗を市内に植えたのを始まりに、その後ワイナリーを開き、レストランなど自ら事業を展開した。

そして、栽培醸造講座「千曲川ワインアカデミー」の代表として人材の育成にも努めている。

玉村さんは「ワインと暮らす。」という観光パンフレットの中で、「ワイナリーやヴィンヤードが集積し、その周辺にパン屋やレストラン、そこに野菜を卸す農家など、さまざまな“プレイヤー”が定着することで産業は発展し、地域が活性化していく」と述べている。
玉村さんはまさにその先達役となったわけだ。
また、このミュージアムのコンシェルジュ大久保さんは、東京の出身で地域おこし協力隊として東御市の活性化に努めている。大久保さんは「まずは地元の方にたくさん来ていただいて、ここのよさをわかってもらい、それを多くの方々に伝えてほしい。」と話していた。

地元の人が県外からのお客さんを連れてきたり、帰省客が訪れたりすることも多いとのこと。地元の人が気付いていない全国に誇るべき身近な地域の資産をここで知ってもらい、その評判が全国に伝播して結果的に観光客を呼び込むことになるはずだ。

この地に興味をもって移り住んで来た人たちは、地元の人とは違った視点を持っており、この土地のよさを客観的に把握しそれを活かしながら地域を活性化することができる。

こうした人たちと地元の人たちが交流し、独自の風土を活かしながらこのワインバレーが誕生したのである。

 

コンシェルジュの大久保さんが丁寧に教えてくれる

 

 

ワイナリーのコンシェルジュ

さて、この「ワイン&ビアミュージアム」だが、ミュージアムとはいっても構えた雰囲気はなく、「ワイナリーのコンシェルジュ」という旅の案内人のイメージで、気軽に立ち寄れるスペースである。
ひとつの建物の中で、温泉に癒され、ワイナリーを学びながらワインを楽しむこともできて、ちょっとした旅気分を味わえた。次回はここで見つけたワインの味とワイナリーの情報をたよりに、千曲川ワインバレーをゆっくりと旅してみたい。

ワイン&ビアミュージアム
http://tomi-wine.jp/wb_museum/

湯楽里館
http://tomi-kosya.com/yurari/

ワインと暮らす。(長野県上田地域振興局企画振興課)
http://www.pref.nagano.lg.jp/uedachi/uedachi-kikaku/chikumagawa-wine-panfu.html