JR最高所「野辺山駅」と国立天文台の障害者が利用できる観光地トイレ  by 菊地 正浩

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 長野県南佐久郡川上村・南牧村にまたがる野辺山高原は、八ヶ岳の主峰、赤岳の東麓に広がる。東西約10km、南北約9km、標高1200~1600mにある。

 東は千曲川に臨んで100~150mの断崖、南は山梨県の清里高原に続く。戦後、海外からの引揚者、戦災罹災者などのために、緊急開拓地に指定された。

 歴史も古く、矢出川流域には100余か所に先土器時代の遺跡が見られる。その一つ矢出川遺跡は日本最初の細石器の出土地として知られる。

 昭和10年、現JR小海線全通で、JR最高所の駅として「野辺山駅」が開設された。

 付近には県境のJR最高地点(標高1375m)もあり、訪れる観光客が絶えない。単線の線路がずっと続いている風景は長閑であるが、カップルが記念撮影する「鐘の石碑」があるのが現代風といえよう。

野辺山駅

 

”JR最高地点 野辺山駅”

 

JR最高地点の線路
幸せの鐘

 

○国立天文台野辺山
 野辺山高原は標高1350mで水蒸気が少ない。四方を山に囲まれている寒冷地だが雪は少ないなどの好条件で宇宙電波・太陽電波観測に適している。

 このため、スバル望遠鏡などでの観測ではなく、電波による「宇宙電波観測所」と「太陽電波観測所」が置かれている。我が国の最先端技術と施設を有する天文台である。

 国内外から多くの研究者や学生が集まり、天体観測や装置開発などを日夜行なっている。

○45m電波望遠鏡
 「ミリ波」と呼ばれる電波を観測できる世界最大の電波望遠鏡に圧倒される。大口径の望遠鏡は天体からのかすかな電波をとらえる。この活躍により、パルサーやブラックホールなど多くの魅力的な天体が発見された。

 具体的には銀河NGC4258の中心部に、秒速1000kmという高速で運動するガスを発見したという。他の望遠鏡で詳しく観測した結果、銀河の中心に太陽の3900万倍もの質量をもつ巨大ブラックホールの存在が確認されたという。

 このように電波天文台は太陽、星、銀河など、いろいろな天体からの電波を観測して、天体の姿や宇宙そのものを研究している。

電波望遠鏡群

 

ひときわ大きい45m電波望遠鏡

 

○45m電波望遠鏡の足元にある立派なトイレ
 望遠鏡を支える骨組みの太さや設備とともに、上を見上げると45mという大きさに圧倒される。その足元に見学者が利用できる、障害者用の立派なトイレがある。

 

見学者が利用できる障害者用の立派なトイレ 外観

 

見学者が利用できる障害者用の立派なトイレ

 

 標高1350mにある国立天文台の見学者用トイレとしては申し分ない。障害者・高齢者・幼児も安心して使える。野辺山という世界最高水準の施設がある国立天文台の中に、立派なトイレがあることは嬉しいかぎりである。

 

( 2012年8月15日寄稿 )