観光地トイレの向上について5

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●長野県伊那市に注目
平成18年3月、伊那市、高遠町、長谷村が合併して新しい伊那市が誕生した。同時に中央アルプスの山腹を貫いて権兵衛トンネルが開通した。これによりJR中央線、飯田線、中央高速道、長野自動車道、甲州街道、三州街道、中山道を利用した広域観光エリアが形成された。中央アルプス、南アルプスに抱かれた、伊那路が新しい観光地として脚光を浴びようとしている。さらに飯田市、伊那市、富士見町、大鹿村は南アルプスの世界自然遺産登録をめざし、すでに協議会も設置して推進を図っている。
恵まれた自然環境を生かしながら、産業と観光振興を図る取り組みが行われているが、観光資源としては充分過ぎるくらい持っていると言っても過言でない。あとは観光立国の一翼を担うアイデア、仕かけ、取り組みなどが期待される。その一環として筆者は昨年「観光地トイレの整備と充実」に関する提案を行った。関係者も関心を持って前向きに検討している。幸い地元には立派なモデルケースがある。
「かんてんぱぱガーデン」のトイレである。南アルプスの景観を眺めてのヘルシーで美味しいかんてん料理も良いが、このガーデンのトイレはユニバーサルデザイン、メンテナンス、数ともに申し分ないと思う。きっとリピーターも多いことであろう。春には高遠城址公園の桜が有名で、多くの観光客で賑わうがトイレ対策もさぞ苦労していることであろう。今後、伊那市が南アルプスの世界自然遺産登録をめざす上からも、総合的な観光地トイレの向上にどう取り組んでいくか注目していきたい。
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長野県伊那市、中央構造線分杭峠の磁場ゼロ地、浄化槽式有料エコトイレ
●観光地トイレの今後と対策
前述のごとく観光地といっても東京のような都市型や上高地・尾瀬といった国立公園型では大きく異なる。なかでも、国立公園や自然遺産地域での維持管理やコスト負担のあり方が大きな課題となっている。このため有料チップ制や指定管理者精度の導入等が模索されている。また、地球温暖化やCO2削減は、トイレの分野においても処理レベルの維持を図りつつ、省エネ化や節水化が進められている。
世界では今や6㍑便器は当たり前の時代であるが、日本では依然として10~13㍑便器を使用している。1回に流す水の量が世界に比べて倍であり、いくら水の豊富な日本だといっても、世界からは無駄遣いと言われている。「受益者負担の原則」がある一方、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第五条には、「清潔の保持は市町村固有の業務」が定められている。今こそ、誰がどのようにして負担すべきなのかが問われている。
●観光地トイレの印象は観光地全体の印象に影響する
いわゆる「暗い、臭い、汚い、怖い、壊れている」の5Kが印象の悪いトイレであり、かつ外国人観光客ならずとも、近年は洋式、水洗、乙姫と広さが求められている。観光地トイレに関するアンケート調査によっても、①清潔、②メンテナンスが良い、③ユニバーサルデザイン対応済。であり、悪いトイレは①不潔・臭気、②便器の数が少ない、ピーク時対策がとられてない、③メンテナンスが悪い(トイレットペーパーが無いなど)である。印象の良いトイレにするためには設置者の悩みもある。①メンテナンス②落書き、いたずら、破壊、③利用者マナー、④維持費の財源、などがあげられる。
パート6につづく
投稿者:菊地正浩
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