ヨーロツパ心に残る町4

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ベネチア 〔イタリア〕
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ベネチアを訪れるときは鉄道がよい。映画『旅情』冒頭のシーンでは、「ベニスの夏の日」のメロディとともに、ヒロイン、キャサリン・ヘップバーンが、鉄橋を渡る列車の中で、まるで子どものようにはしゃぎながら映写機を回し、初めて旅するベネチアの街に期待と喜びを表現。ラストシーンではせつない汽笛とともに、サンタルチア駅を離れる列車の窓から身体を出して、やるせぬ別れの気持ちを演じるシーンなどが登場し、ベネチアと鉄道は、旅人にとって最高のロケーションになるからだ。
列車は陸側のメストレ駅を出ると、海を渡る長い大鉄橋に入る。鉄橋を渡る列車のリズミカルな音とともに、やがて海の向こうに、赤茶けた屋根の揃った美しいベネチアの町並みが現れ、列車は近づいて行く。心ときめかせながら、これから訪れる水の都への憧れにワクワクしながら行くのも、鉄道旅ならではの感動である。できるなら、列車の窓から思い切り顔を外に出して、潮風に迎えられながら眺めて行きたい(ユーロスターやシサルパンなどの特急列車は窓は開かない)。
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やがて終着駅であるサンタルチア駅に到着。列車を降りた乗客たちは、それぞれに旅の荷物を持ちながら、ドドッと駅舎に流れて行く。駅舎を突き抜けて玄関前に出ると、運河と活気溢れるヴィポレット「水上バス」乗り場の雑踏が突然目の前に拡がり、海の中にある異色の街に来たことの強烈な印象を与えてくれる。
鉄道旅では、荷物の移動などの都合上、宿は駅の近くに決めることが多い。昨年泊まった宿は、サンタルチア駅から徒歩3分の4つ星ホテル「ベリー二」だ。世界的観光地だけに、ホテル料金は他の都市と比べ割高だが、ベネチア市内ではサンマルコ広場などメインストリート付近に比べ、駅付近は安いようだ。宿のつくりも廊下こそ、この町のように迷路みたいであったが、メゾネットタイプの部屋にベネチアンスタイルという年代物の内装は、大変趣があり落ち着かせてくれた。
ベネチアは街のすべてが写真の被写体になり、シャッターボタンから指を外す暇がないほどだ。入り組んだ個性ある歴史的また芸術的建築が海を埋め、その細い路地の運河を、波を軒先にチャプチャプと当てながら、観光客を乗せたゴンドラが行き交う。時折、狭い運河の交差点で、建物の間に吊り下げられた信号機に従って、向きを変えている運搬船やゴンドラのゴンドリエーレの交わす大きな声が、活気ある運河の路地裏に響く。
潮の香漂う哀愁の街ベネチアの観光は、旅人に無限のテーマを与えてくれる。ガイドブックを見ながら、地図を頼りに歴史的建築物を訪れるもよし。ゴンドラに乗り運河めぐりを楽しむもよし。サンマルコ広場のハトと戯れ、楽団の演奏に酔いしれるもよし。また映画『旅情』のヒロインになりかわり、ロケ地めぐりもおもしろい。
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私はいつも、迷路のような町並みを、道に迷いながらただ歩き、細い路地裏で頭上の洗濯物を眺め人々の暮らしぶりを感じたり、数えられぬほどあるショップを覗いたりして人々と接する、ぶらり散策が楽しい。ベネチアは何度訪れても新鮮な気持ちで迎えてくれ、まるでイタリアの磁石のように引き寄せられる、飽きない街である。
パート5につづく
投稿者:にわあつし
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