対応の悪さが目立った樽見鉄道

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4月7日、取材で岐阜県の樽見鉄道へ行ってきた。目的は終点樽見から徒歩15分の淡墨桜。継体天皇のお手植えと伝わり、樹齢1500年といわれるサクラの古木である。散り際に独特の淡い墨色になることから、この名で呼ばれ、三春の滝桜(福島県三春町)、実相寺の神代桜(山梨県北杜市)とともに日本三大桜で国の天然記念物にも指定されている。また、作家の宇野千代が保護を訴え、活動したことでも有名だ。
樽見鉄道は昭和59年(1984)に国鉄樽見線から第3セクターの樽見鉄道に転換。当時は美濃神海(現・神海)までしか開通していなかったが、昭和63年(1988)に樽見まで延伸。毎年約10万の見物客を集めるという1本の淡墨桜への輸送手段としても大いに活躍する。例年この淡墨桜の開花期に合わせて、臨時列車を多数運行する桜ダイヤを組んでいたが、昨年は貨物輸送の打ち切りや客車の引退などもあり、この桜ダイヤを組んでおらず、不景気で存続の岐路に立たされていることは聞いていた。
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ところが本年度は桜ダイヤが復活したので、16年ぶりに再訪することになったのだ。しかし、噂は前々から聞いていたが、大垣駅から目的の列車に乗ろうとして閉口した。せっかくのかき入れ時というのにレールバス1両の運行。職員は「もういっぱいだから次の列車に乗ってくれ」という。30分待ちでなんとか次の列車に乗れたものの、こちらも1両で超満員。またまた積み残しが出て、乗れなかった人は次の列車まで1時間近く待たされることになった。桜シーズンの積み残しは都電荒川線でも見られた光景だが、次の電車まで5分待ちですむのとはわけが違う。
結局、僕の乗った列車は本社のある本巣で1両増結して急場をしのいだが、なぜ起点の大垣で最初から2両編成で運行しないのか、車内の乗客からも不満の声が相次いでいた。16年前に訪れたときはまだ開業フィーバーの最中だったかもしれないが、お花見列車「うすずみファンタジア号」の客車が3両編成で運転され、楽々座れたばかりか、お花見弁当も販売されていた。しかも車内は宴会ができるようテーブル付に改装されており、樽見までの汽車旅を大いに楽しんだ。だが、その後、地元の友人ですら「超満員で疲れるからもう行きたくない」との声が聞かれた。
もちろん車両の老朽化などの事情もあって、昔どおりにいかないのは百も承知である。しかし、せっかく観光の目玉となっている淡墨桜への輸送手段で、しかも土休日ともあれば1両で対応できないことくらいは、例年の輸送実績で分かっていたはずだ。たとえ乗客が座れないにしても、1両と2両では車内の混雑度や不快感は全然違う。駅から15分歩くのに対し、観光バスやマイカーでは近くの駐車場まで行けてしまうので、淡墨桜のリピーターがこちらに流れてしまう可能性は高いのだ。シーズン中は列車の時間に合わせて駅から淡墨公園までのシャトルバスをもうけ、100円程度の運賃をとるだけでも結構な実入りがありそうな気がするのだが……。
先日、会員のK氏も第3セクターの某鉄道の取材に出かけた際、あまりの食事のまずさに閉口したと云っていた。客が来るからという便乗商売に甘んじていないだろうか。クレームの類はまず書けない旅行ガイドブックに対し、ネット上でのクチコミは恐ろしいほど伝達も早い。もちろん単なる荒らし目的の悪口もあるだろうが、大半は当たっていることが多い。結局、それを嫌味ととるか、改善手段のアドバイスととるかは各施設次第になるのだが……。
不況にあえぐ第3セクターもただ「助けてくれ、乗ってくれ」の他力本願ではなく、本当に観光客を増やすための方策が正しいのか。もう一度見直すべき時期に来ていると思う。
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投稿者:管理人
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