ヨーロツパ心に残る町5

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ブルージュ 〔ベルギー〕
「天井のない美術館」と言われる、美しい街ブルージュは、首都ブリュッセルから、オーステンデ方面への急行列車で約1時間。車窓いっぱいにベルギー・フランドル地方の広がる田園地帯を眺めながらの、のどかな列車旅だ。
 13世紀頃から北海に通じる航路の拠点でヨーロッパ最大の港町として栄えたブルージュは、15世紀末、港への航路が泥で埋まり北海への道が絶たれると、繁栄の町から閉ざされてしまい、20世紀初めに新しい海路が開かれるまで何百年もの間歴史の蔭に埋もれていた。
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 中世ハンザ同盟の町として、豪華絢爛に輝いていた時代そのままに現存する町並みは、心に響くものがある。ブルージュ駅から街の中心マルクト広場に聳えるベロアの塔までは、ゆっくり歩くこと約30分。メロディを奏でるカリヨンの音とともに、366段の石段を登り詰めた高さ83mの鐘楼からの眺望は、煉瓦色の屋根の鮮やかさと、三角形の切り妻の家並みの階段状の形が、宝石のカットのような美しさに見える。そして「北のベニス」と呼ばれるほどに、迷路のように張り巡っている運河の輝きは、名の如く宝石を散りばめたような世界である。
 今回訪れた6月のブルージュは、曇り空に時折小雨のぱらつく肌寒い気候であった。濡れた石畳の通りを歩き、見上げるゴシック建築の市庁舎やベロアの塔は、フランドル特有の霧が、覆い被さりまた流れて行き、幻想的な世界を描き、深い眠りの歴史を映し出しているようである。
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 遊覧ボートで巡る町並みはまた違う顔がある。橋梁の下すれすれに進むなか、運河の両岸には歴史的建物が続き、建物を覆う蔦や木々とともに運河に映る。折り返し地点近く「愛の湖」には、白鳥が戯れ子どもたちが遊ぶ。すぐ近くには、かつて中世ヨーロッパで流行した「らい病」で、帰らぬ子どもたちを収容したという、ペギン会修道院の白い建物があり、激動の時代の哀れさを語りかけているようである。
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 昔、アントワープで貿易会社をしていた友人家族に連れられ、初めて訪れたブルージュのマルクト広場の屋台で子どもたちと食べた、マスタードをたっぷりとつけた揚げたてフライドポテトの味が忘れられず、今回も移動屋台を探す。観光馬車乗り場横に屋台を発見し、寒いなかホカホカのフライドポテトを、昔を思い出しながら食べる。
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 ブルージュでの味は、本場ベルギーのまろやかな味の琥珀色ビールと愉快なチョコレート、そしてホカホカのフライドポテトが最高のグルメであった。
パート6につづく
投稿者:にわあつし
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